海月玲二

ここからちょっと変則的な旅程になる.フィンランド湾を東に渡って,ロシアのサンクトペテルブルクを訪れた.

日本人がロシアに旅行する場合,ビザを取るのが大変に面倒である.基本的にはすべての旅程を決めて宿や交通機関の予約を済ませ,書類をきっちり揃えて領事部に申請しないと観光ビザはおりない.しかしながらこれには多少の例外があって,サンクトペテルブルクもその一つなのだ.ST. PETER LINEなる会社の船を使って海路で入り,観光ツアーに参加している場合は,ペテルブルク市域内に72時間までノービザで滞在できる特例が存在する.

入国〜出国が72時間ということなので,事実上2泊までだろう.最後に早朝出発して到着日の入国時刻より早く出国できれば,理論的には3泊可能かもしれないが,フェリーが朝到着で夕方出発なのに早朝に出国手続きが可能か怪しい.よしんば可能でも,狭くて何もない出国後エリアで何時間も待つはめになりそうだ.

また,もちろん俺としては「ツアー参加が条件」というのはあまり嬉しくない.でもそういう奴が多いことはこの会社も承知していて,普通のツアーのほかに「シティツアー」という名目の実質的な送迎バスを用意している.つまり,この特定の送迎バスに乗れば,会社側が「この人はツアーに参加しています」という扱いにしてくれるのだ.港から市中心部までマイクロバスで2〜30分,あとの時間はすべて自由である.ホテルでさえ,自分で勝手に予約したもので大丈夫だ.

最近この話を知り,今回はヘルシンキーペテルブルク往復のフェリーと送迎バスを予約しておいたのだ.ホテルはふつうの予約サイトで適当に安めのところを二泊取っただけ.支払いさえすませずに行ってみたが問題はなかった.ただ,このプランでノービザ入国する場合,船にチェックインするときホテル予約の証明が必要なので,予約確認書を印刷していく必要があることだけは注意が必要だ.


以前サンクトペテルブルクに来たのはおよそ15年前である.15年の間にロシアもだいぶ変化した.少なくとも表通りの建物はきれいになっているし,西側風ショッピングモールもあるし,西側メーカーの新車だっていっぱい走っている.当時はマクドナルドが珍しい感じだったけど,いまやバーガーキングだろうがケンタッキーフライドチキンだろうがどこにでもある.ユニクロだってある.まあ,ちょっと通りを曲がるとまだまだボロい建物があったり,数十年ものと思われるモスクヴィッチ(ソ連車)が走ってたりすることもあるけど.

最近のロシアだと,スタローヴァヤ(セルフサービスの軽食堂)も流行らなくなってきているとか聞いたけど,ペテルブルクにはかなりあった.まあソ連時代のものではなく,きれいに新しく作ったものも多いようだった.役割としてはファストフード店に近いかもしれない.安くて味も悪くないし,ロシア語わかんなくても指差して注文できるのでそれなりにオススメ.

食べものと言えば,テレビのロシア語講座で知った「プイシキ」なる揚げドーナツも試してみた.思ったほど重いものではなく,しっかり夕食を食べた後でもいける.気軽なおやつとしていいかんじである.ただ,これはぬくいものを食べないとイマイチだ.最初よく知らずに冷えたのを食べてしまって,実はおいしいことに気付いたのは帰る直前だった.食堂とかでも(揚げたてじゃなくても)せめてレンジでぬくめたりしてもらうほうがいいようだ.

さてペテルブルク観光といえばエルミタージュ美術館だが,当初めんどうだからパスしようかななどと適当なことを考えていた.なにしろ切符を買ったり入場したりするのが一苦労だとかいう話をよく聞くし,実際俺が前回行ったときも2時間ぐらい並んだような気がするのだ.

しかし,散歩の途中でYが「どれぐらいすごい行列なのか見にいこう」とか言いだし,実際に行ってみるとこれが別に行列なんか全然ない.ついうっかり切符を買ってしまい,数時間宮殿の中をうろうろと歩き回ることになったのだった.はてどういうことだったのか.白夜シーズンか否かで全然違うんだろうか.まあ9月(新学期)はじめの平日に行ったから,ロシア人的にはあんまり休むような日ではなかっただろうけども.中もそれほど混雑してなくて,ときどき来る団体を避けて歩いてれば,のんびり絵や調度品を眺めるぐらいの余裕は十分あった.喫茶コーナーも普通に座れたし.


ST. PETER LINEの船は仮にもクルーズ船なので,それなりにバーとかレストランとかカジノとか免税店とかの施設がある.予約のときに夕食プランをつけると,メインのレストランでバイキング形式の食事ができたりする.今回,本来は夕食プランをつけないつもりだった.

ここで一つ失敗の話.実は今回,「二人で一部屋」予約しておいたつもりが,「二人部屋に一人ずつ,二部屋」予約してしまっていた.つまり無駄に一部屋多く取ってしまっていたのである.チェックインのとき係の人が気付き,「さすがに返金はできないが,一部屋キャンセルしてそのぶんを夕食プランにまわすことは可能だよ」と言ってくれたので,そうしてもらうことにした.

というわけで,結果的に食べることになった船内の夕食バイキングであるが,これが思ったよりうまいし品数も多い.しかも,ワインとビールは飲み放題である(ロシア人からすればソフトドリンク同様の感覚なんだろうか).本来この夕食バイキングは一人29EUR(早めに予約すればもうちょっと安くなる)であるが,損した感じはしないぐらいのレベルだった.よかったよかった.

なお,このメインのレストラン以外でも,カフェテリアやバーなんかで個別に軽食を頼むことも可能だ.カフェテリアでパンとスープを頼むと5EURとかそんなもんなので,節約したければ夕食プランをつけずにこっちでしのいでも十分なのである.実際,今回も復路便はそうした.さらに言えば,いちおう飲食物は持ち込み不可ということになっているが,カバンの中にバナナとかヨーグルトとか入ってても別に取り上げられたりはしなかった.たぶん,そういう方法も可能であろう.

ところでバーのいくつかは甲板上にある.俺の感覚では,9月でも外で飲むとか寒くてとても耐えられないと思ったけど,それなりに客はいた.北国の人達はすごい.

2016-09-06(火)

タリン

エストニアの首都.旧市街はかなり観光客向け,テーマパーク寄りの町だ.いちおう学校とか雑貨店とか観光客向けでない施設もゼロではないが,ほとんどが博物館とかレストランとかおみやげ屋とかである.特におみやげ屋の多さはものすごい.別にそんなに違う物を売ってるというわけでもないのに.というかマトリョーシカとかエストニアで買ってどうするのだ.スーパーが旧市街内部に存在しないのも,どうも不便だな.

レストランがいっぱいあるわりに,予約をしたほうがいいみたいなことを言われるのもちょっと驚いた.旧市街は観光客ばっかりなので,ガイドブックに載ってるレストランはすぐ満席になるらしい.しょうがないので夕食は中心からちょっと離れたところまで行くことに.

でも首都だけあって,レストランのレベル自体はそれなりに高いようである.あまり深く考えず入った店が,けっこうちゃんとしたレストランでびっくりした.カトラリーは一品ごとに別になるし,いちいち料理の説明はしてくれるし,先に入ってた客はよそいきの格好だし,いいかげんな服ではアレだったかな? ……と思っていたら他の席がだんだん観光客で埋まってきて,こっちはみんな似たりよったりの格好だった.うーん.いや,お味はしっかりしていて,結果的には食い物にうるさいYもおおむね満足だった.たまにはまともなステーキとか食べると満足感があるな.

一方,新市街はわりとふつうである.どうでもいいが,ショッピングモールを一人でぶらぶら歩いていたら,宗教の勧誘の人にパンフレットを押しつけられてしまった.旅行中でも意外とあるよねこういうの.

2016-09-06(火)

無題

最近,空港に自動チェックイン機というものがあることは知ってはいたのだが,自発的に使ってみようと思ったことはない.一回プラハで強制的に使わされたことがあるぐらいだ.

今回,特に深い意味もなく帰りのヘルシンキ空港で自動チェックイン機を使ってみたところ,思ったより簡単でびっくりした.パスポートを読みとらせたら,搭乗券とバゲージタグ(と言うのか? 預け荷物につける,空港の3レターコードが書いてあるやつ)が出てきて,荷物を預けて終わりだ.全然並ぶ必要がないし,事前の特別な準備も何も必要ない.これはなかなかいいな.たしかプラハのときはもう少しめんどくさかったような,チェックイン機のあとで何か並んだような記憶があるのだが.

簡単になったのは,パスポートがICカード式になって,機械で情報が読みとれるようになったからかもしれん.ヘルシンキ空港の入国出国審査でも自動化ゲートが使えるようになってて,これも楽でよかった.

しかしアレだ,最近は飛行機の搭乗券もレシート風のぺらぺら紙とか,下手するとスマートフォンの画面とかそういうの増えたね.確かに,最近はコードを読みとるだけなんだから,昔の厚紙長方形にこだわる必要は全然ないわけか.というか昔のやつは常々でかくて邪魔だなあと思っていたから,扱いやすくなるのは大歓迎だ.

そういえばヘルシンキータリン間の高速船の切符も,ネットで予約したら送られてきたpdfを見せるだけで大丈夫だった.乗るときに,カウンターに行って搭乗券を印刷してもらうものだとばかり思っていたので,そのまま搭乗口に行けとか言われて半信半疑.おっさんの俺としては,そもそもスマートフォンの画面でバーコードが読みとれるのかなんとなく不安だったので,普通に通れてちょっと感心してしまった.

2016-09-07(水)

無題

バルト三国は,ハンザ同盟あたりからドイツ文化圏だったようだ(リトアニアは微妙か?).タリンやリーガの旧市街ではハンザ都市であったことをウリにした演出がよく見られるし,ドイツ人の団体観光客がよく見られるのもそのせいらしい.

歴史はともかく,ドイツ文化圏なので食文化も強く影響を受けており,「ビールがうまい」というのがここで俺が言いたいことである.大手メーカーのも悪くないし,あちこちの地方に地ビールがいろいろあったり,レストランで自家製ビールを頼めることも多い.バーでは,ワインリストよりビールリストのほうがずっと長かったりとか.

バーとかレストランで飲むのもいいが,スーパーのビールコーナーを見るだけでもけっこういろいろあって楽しい.適当な地ビールとお惣菜やポテチを買ってきて,ホテルの部屋でいただくだけでもわりと満足感高かった.というか,バーに行っても普通に瓶ビールが出てきたりするので,それなら自分で買って部屋で飲んだほうが安あがりという気も.専門のバーだとあまり売ってないレアなやつとかも揃ってるのかもしんないけど,そもそもバルト三国の地ビールというだけで日本人にとってはぜんぶレアだ.

最近は日本でも外国ビールがけっこう手に入るようになってきたけど,バルト三国のはあまり見た記憶がない.いわゆるビジネスチャンス.観光ツアーとかでも,ビールがうまいことを推していいレベルだ.


2016-09-07(水)

無題

今回の機内映画のコーナー.

  • the Lobster: なんか変なディストピアもの.「みんなでリア充死ね死ね言ってたら,なんか彼女ができちゃって面倒なことになった」みたいな話.リアリティとか整合性とかはかなりアレで,イヤなシーンをてきとうに繋げた悪い夢みたいな作りだが,そういうのは別に嫌いではない.
  • Deadpool: 昔のエディマーフィの映画みたいに主人公がべらべら喋るので一瞬変な感じがするけど,話のつくり自体はオーソドックスだ.ヒロインやサポートキャラもトラディショナルな造形だし.べつに破綻はしてないので,気楽に楽しめていいと思う.
  • London has fallen: いやこれは実にしょうもないwwwww.大事件なのに当然のようにアメリカ関係だけ生き残るし,リアリティもクソもない.今どきこんな映画出せるとは感心する.
  • Money Monster: なんかアレよね,ストックホルム症候群をおっさんとアホっぽい兄ちゃんでやるのって需要あるんかね.あと,株価の乱高下で大損害が出たとかで,この映画みたいに特定の犯人がいるんだったら話は簡単なんだけどねえ.実際そういうモンではないだろうなあ.