くりす
ネットゲーム上ではどのようなコミュニティ形成がされるのかに興味を持ち、昨年から「エバークエスト」というネットゲームをやっています。

1年間やってみて思ったのが、ネットゲーム、もしくはエバークエストというゲームの楽しさは、音楽の世界でアドリブでセッションをやる楽しさに似ているということでした。

エバークエストというゲームの場合、自分のキャラクターの職業特性がはっきりしていて1人でプレイするとできることがかなり限られるので、より楽しむためには複数でパーティを組むことが必要になります。

パーティを組んでプレイする際には、いわゆるプレイヤースキルと呼ばれる、状況に応じて適切な行動を逐次判断する能力が必要になります。状況は刻一刻と変化するため、単純に同じ動作を繰り返すのではなく、当意即妙の反応を求められます。

個人で特定のスキルを追求する点と、他人とプレイする時に即興で一緒にものを作り上げていく快感がある点があるところに、非常に類似点を感じたのです。

また、エバークエストには、30〜40人といった単位でチームを組まないと倒せないような強力なモンスターも設定されています。そのようなモンスターを倒すために作るチームのことを「レイド」と呼びます。

レイドを組んで目的のモンスターを倒すに当たっては、連携をとりやすくするために、即興だけでなくきちんとした行動計画を立ててレイドリーダーと呼ばれる指揮者が全体の状況を見て適切な指示を出す必要が出てきます。

当日指示に対して瞬時に反応できるように、全体、あるいは特に連携をとる必要がある同じ職業の人同士で事前に集まってリハーサルをしたりすることもあります。

こういう姿も何かに似ているような気がします。そう、レイドはオーケストラのようなものなのです。

ただ、ライブやコンサートとネットゲームの違いは、前者には観客が存在しますが後者には存在しないという点です。その代わり後者には同じ狩場を共有している他のプレイヤーへの配慮というものが必要となりますが、自分たちの創作物への責任という意味では観客を楽しませなければというプレッシャーがない分楽なような気がします。そういう意味では発表会のないクラブ活動のようなものなのかもしれません。

このような仕組みは非常によくできているなと感心するのですが、一方でプレイヤースキルを上げるためにはある程度の情報収集力と理解力が必要なので、確かに気軽に参加できるものではないだろうなという気もします。

ネットゲーム人口は増加傾向にあり、ネットゲームの数自体も増えていってはいるものの、最終的にはやはり一部の好事家のものでしかありえないでしょう。

けれども、その構造からして、世の音楽演奏愛好家人口程度の規模まではパイは広がりうるのではないかと思います。そういう意味ではまだまだ成長の余地はありそうです。