yukatti

夏本番という感じ。連日暑い。

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公開二日目の19日に、映画『崖の上のポニョ』を近くのシネコンに見に行った。いちばん大きなスクリーンだったのにほぼ満員で、そのかなり(ほぼ7割)が家族連れである。ポケモンと動員を競っているのがまざまざ分かる(シネコンロビーは子どもだらけ)。というかまあ相乗効果を狙っているんだろうが。

あの印象的な「ぽーにょぽにょぽにょ」の主題歌は、映画のラストで聴ける。

で、妄想、とか死のイメージだ……とかの辛口批評を見て「いったいどんな映画なの?」と思いつつ行ったわけだけど、佐藤亜紀http://tamanoir.air-nifty.com/jours/2008/07/2008719.htmlの感想にほぼ近い。竹熊健太郎氏のhttp://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_fb6c.htmlにも納得できる。クトゥルー神話との関連を指摘した「てすかとりぽか 『崖の上のポニョ』 クトゥルー神話」も素晴らしい。

※以下、多少ネタバレを含みます。

Amazon.co.jp: 三びきのやぎのがらがらどん—ノルウェーの昔話 (世界傑作絵本シリーズ—アメリカの絵本): マーシャ・ブラウン, せた ていじ: 本 Amazon.co.jp: モチモチの木 (創作絵本 6): 斎藤 隆介, 滝平 二郎: 本 わけわかんないなりに、世に存在しない何かを見せてもらえた満足感はある。個人的な体験で言えば、『三びきのやぎのがらがらどん』や『モチモチの木』で感じた、自分の想像・知識の範囲外のものに対するひんやりとした恐怖感……そして恐怖に打ち勝つときのカタルシス。でもそのカタルシスも再び始まる新たな時の流れのなかに、なんとなくぼやぼやと消えていってしまう……。

「ひんやりとした恐怖感」といえば、佐藤亜紀の感想の中のワルキューレの騎行紛いが延々と流れるのにはうんざりだは完璧に同感だが、しかし、あれが無ければもっとあのシーンは直接的に怖くなっていただろう。波が押し寄せる怖さ、そして波の上をシタシタと「女の子」がひたすらに走っているのだ!

そしてもうひとつ思ったのは、車椅子の老女─お年寄りたちが、足が治ること、また走れるようになることを切実に願い、そして実際それがかなってわくわくと走り回り、しゃべり、はしゃぐ姿があるということ……そういったことのはしばしでちょっと理解できてしまい(年寄りの知恵、しかし、体はもう衰えてしまい思うように動けないということ)、あの映画は若者には作れないし、思いつかない、年寄りが作った映画、絵本、「お話」なんだ、ということなのだった。
そう、「お話」……思いつくままに、脈絡無く語られる面白いお話。それに近いのかなとも思う。お話って、大人が聞くと荒唐無稽、くだらない、でも語っている人と子どもには面白い……ってことあるよね?

あと、予告を見るだけでも分かるけど、「人魚姫」の話がモチーフ、というか、話のそもそもの前提になっている。

舞台となっているシーサイドのこじんまりとした町は、事前知識無しで見たので見ている最中は分からなかったけれど、神戸育ちのわたしにはなーんかどっか懐かしいなぁ、瀬戸内海みたいだなあ(まず赤穂とか相生を連想した)と思いつつ、街を車で走るシーンのところで「鞆の浦かも」とピンときて、やはりその通りだった。帰宅後調べてみたらやはりポニョは「鞆の浦」がモデルなんだそうだ。瀬戸内海に縁のある人にはどこか懐かしい風景かと思う。

なお、子どもたちの反応はどうだったかというと、たけくまメモに書いてあることに近くて、途中から比較的シーンとしていた。子どもって原始的でしょもないことにうけるよね、ポニョがテーブルや椅子にどすんとするところで、がきんちょ大うけ。しかし、「もののけ姫」(本気で恐怖にかられる子が多数発生した気配)や、「千と千尋の神隠し」で湯婆婆に泣き出した子といったような、強い恐怖感、呪縛感からの「シーン」ではなくて、緊張はなく、ただただあっけにとられたというような感じ、何かこの世ならぬものを見せられ、アニメの中の、信じられないことに対して疑問を持たず納得している人たちに「何か不思議なことが起こっているが黙って今は受け入れなくてはならない」(そういう台詞も映画の中に実際ある)という気持ちにさせられるのだった。

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そして数日後、買ってきた映画パンフレットを読んで気付いたこと。

パンフレットによれば、実際、宮崎監督がこの映画の構想を練っている時、BGMとしてよく聴いていたのはワーグナーの歌劇「ワルキューレ」の全曲盤だった(『ぷろだくしょんのーと』“ワーグナーの「ワルキューレ」”を聴きながら より)のだそうだ。

ワルキューレの世界観が、今まさに終わりの時を迎えようとしている神々の世界が舞台であることからも「ワルキューレ」が本作に影響を与えていることは推察できます。(同)

また、瀬戸内海がすぐ連想されたのは、港・土地の形状だけでなくパンフレットにあるように瀬戸内海沿岸でよく見られる「水平線の高さ」(海を山の上から見下ろすことで水平線が自分の想定している感覚よりも高めに見える、というもの)にもあるのかな、とも思ったのだった。

出来ればもう一度、劇場に見に行きたい。

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7/31追記。宮崎駿が「鞆の浦」で構想を練ったことや、ポニョ原型?の金魚についてなどの記載があった。→ 宮崎駿が「崖の上のポニョ」の構想を練った鞆の浦の家(via ポトチャリポラパ ダイアリー7月31日2008年