「男のデカさはメジャーではかれ!!」
身長2mを越える巨漢の巨峰貢は、日本のプロ野球に、社会人野球に、そして恋人にまで捨てられ、挙げ句最後のチャンスのはずのトライアウトのために上陸したアメリカでカバンを置き引きされ、そのトライアウトにすら参加できなかった。
同じく空港で財布をすられた男の計らいでシングルAの試合に出ることになり、そこから彼の野球人生は再スタートすることになるが、、、
という感じではじまったこの作品。
山田芳裕らしい豪快な画風とメジャーリーグというスケールの大きい世界は非常によくマッチしていると思う。
しかしながら「一人の人間の成長」というシナリオの根幹と、「徐々に舞台を大きく」という方向性は、結果としてありきたりな漫画の枠を出ることができなかったように思える。
いやいや、毎回のダイナミックな描写、主人公自身の持つカタルシス、加えて登場人物達の熱さはどれもこれもいい。
いいのだが、なんていうのかなあ、ひと味足りないような、多すぎるような、そんな印象がある。
はっきり言って、山田芳裕作品として推せる作品ではない。
なんていうか、山田芳裕らしさが足りてない気がするのだ。
などと書いて、もし作者の目に留まったら気を悪くされるだろうか。
や、作者としては連載開始当初に書こうと思ってたことをすべて書ききれてるんじゃないか、って気はするのよね。
作品は終始、主人公・巨峰貢(ジャイ)と大学時代の同級生で日本の野球を選んだ三島の二人の野球バカの対比として描かれているし、
そのまわりを固める神宮寺、高取、カマーチョらもきちんと自分の役所をこなせているように見える。
いつも書いているような「終わりどころを間違えた漫画」にならずに済んでいるように思う。
ただ、なんとも収まりの悪い感じがあるんだよなあ。
多分その理由のひとつは、なんとなく駆け足っぽく見えるところだろうか。
作品全体の落ち着きがないように見えるんだよな。
そしてそのことは掲載誌がモーニングであったことと関係しているんじゃなかろうか。
2年以上も連載してたのだから人気がまるでなかったわけではなかろうが、
しかし必ずしもモーニングの誌面にマッチした作品だったとは思えない。
今ひとつの人気を保つためには脂っこさが必要だったのではないか、ということだ。
密度を高くせざるを得なかった、というか。
そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。
けれど、わしの好きな山田芳裕作品ってのは、もっとこう、飄々とした感じが全体にみなぎっているんだよなあ。
それはわしの勝手な思いかもしれないけれど。
加えて氏の極端な大デフォルメがちょっと多すぎるかもしれない。
この作品、全体のちゃんとした流れを把握するためには、まとめて読むのが吉だと思う。
しかしまとめて読むと例のデフォルメの頻度がやたら高く感じるのね。
これがダメな人にはダメかもしれない。
なんていうか、作品の「ウソくささ」を助長している面があるかもしれない、と感じた。
もちろんこの「ウソくささ」をひっくるめてわしは彼のファンなわけだが、しかしファンのわしがそう感じる、ということは、ファンでない人から見ると鬱陶しいものになっているのかもしれないな、ということね。
そんなわけで、全体の評価としては★★☆☆☆。
この作品を絶賛できない理由はもうひとつある。
わし、野球マンガが苦手なんだよなあ。キャプテンとかプレイボールとかドカベンとか、全然読んでないし。
なぜかわからんのだが、いまひとつ夢中になれないのよね。
ってのは野球マンガ自体、方法論ってのが確立された分野じゃないですか。
結果が分かり切っちゃってる、というか。
いや、常に主人公が勝つ、とも限らないんだけど、負ける場合、負けた後の展開とかってのも書き尽くされてるからなあ。
なのでいまいちハマって読めなかった、というのもある。
ま、それは結局「ありきたりな漫画の枠を出ていない」ってことだと思うのよね。
ただ、枠を出なくてもその中で面白いモノを書く人はたくさんいるし、この人もそういうセンスを持った人だと思うのね。
だからこそもったいないなあ、という気になるんだよなあ。
いやいや。相変わらずこの人の大ファンであることには変わりないですよ。
次回作にも期待してますがな。ただ、モーニング、イブニングあたりではどうなのかなあ、っていう気がしちゃうな。
(第9巻発行日:2005/03/23)
「ジョージ朝倉」でググって辿り着きました。
いきなりでアレなんですけど、『溺れるナイフ』って
くらもちふさこ先生の『天然コケッコー』に似てませんか?
似てるというか、ちょっと盗作っぽい感じすらあります。
ネームや構図・人物構成が似すぎてるんですよね。
ギリギリ、許容範囲なんでしょうか。
『天コケ』未読でしたらぜひこの機会に読んでみてください。
名作です。(2007-02-07 10:38:21)
「天然コケッコー」未読です。機会があったら読んでみたいと思います。ご紹介ありがとうございました。(2008-11-24 16:39:08)