海月玲二

さすがに,散歩してまわってもなかなか楽しめるところだった.旧市街はそれなりに複雑(ガイドがないと歩けないほどではない,というのもポイント)だし,地区ごとに雰囲気が変わるというのがすごい.普通の旧市街の4つ分楽しめるわけである(言いすぎ).しかも,ここではおみやげ売りとかのセールスをスルーするのが非常に楽である.観光客が多すぎるので,一人あたりの対応の必要が減るのだ.観光客があまり通らない通りでは,セールスもほとんどなくなるし.

一方西エルサレムの新市街では現代的な町並みを楽しむことができる.けっこう広いのだが,ちゃんと路面電車やバスもあちこち走ってて,外国人でも使いやすいのでご安心だ.停留所に「あと○○分で来ます」みたいな表示さえあって,もう完全に先進国の雰囲気である.レストランやカフェなんかも,先進国的に洗練されたものを出す店が多く,それなりにグッドだった.

さて先進国みたいということで予想できることだが,エルサレムは物価が周辺と比べて超絶に高い.あまりに高いので,さすがの俺もドミトリーに泊まらざるを得なかった.食事も,外食は一日一回までに制限して,ホステルのキッチンにはお世話になった.新しいホステルなので設備もわりと綺麗で快適だったし,ふつうの観光客より早寝早起きなのでシャワー等の時間が他人とかちあうことも少なかったけど,やはり部屋で一人になれないというのは落ちつかないな.

新市街の博物館を見ていたら,「一時期たくさん来たソ連系の移民とそれ以外の市民との軋轢」みたいのをテーマに,わりとえげつない画風の絵を描いてる人の展示がなかなか面白かった.「ユダヤ人」というアイデンティティをもってしても,それでも人は「あいつらは俺らと違う」とかいうようなことをやりたがるものなんだなあ.


これはキングフセイン橋と同じものである.イスラエルではアレンビー橋と呼ぶのだ.同じ国境を往復するのははじめてだが,別にだから簡単ということもなかった.なにしろヨルダンとイスラエルのイミグレは別物だからな.

ここを通る場合のイスラエル出国税はべらぼうに高いことで有名だ.俺が通った時点では180NIS(5500円ぐらい)だった.現金がほんとうにギリギリで,財布からもたもたと小さなコインまで出して数えてたら,隣で出国税を払っていたアメリカ人に「大丈夫? なんなら余ったコインあげようか?」などと哀れまれる始末.そもそもカードで払えるんだから,無理して現金で残さなくてもよかったのだ.

高い出国税にしろ,橋を渡るバスの外国人用がどうなってるのかすごくわかりにくいことにしろ,ここでビザが出ないことにしろ,やはりイスラエル的にはこの国境で外国人も通してるのは「あくまでついで」なんだろうなあ.バスなんか,パレスチナ人向けのものはどんどん来るし.

まあでも,一番の問題はヨルダン側についた後の話で,国境からアンマンまで行くバスが全然見あたらなかったことである.周りにはタクシーしかいないようだし,警察の人に聞いてみてもタクシーの話しかしない.実に困ったものである.ネットの体験記を見るとバスに乗ってる人もいるようなのだが,なんか探す場所が違ったのだろうか?

しょうがないので,俺はてきとうにそのへんにいた台湾人とタクシーをシェアしてアンマンまで行ったのだった.

2018-03-03(土)

マダバ

ヨルダンに戻って,ちょっと南のマダバなる町に行ってみた.ここはビサンツ帝国時代の教会跡,特にモザイクで有名である.調べてみたところ,どうも8世紀ぐらいに地震で壊滅して,そのあと最近まで誰も住んでなかったらしいので,そのせいで直前の時代の建物跡がよく残っているということかな.

せっかく来たので,まず中東地図を描いた大作をはじめいろんなモザイクを見物したわけである.さて,そのあと丘の上にある教会に行ってみたら,展示室に各所のモザイクのレプリカが展示されていた.そしたらこのレプリカが,レプリカだけに色あざやかで綺麗なのである(本物は当然経年変化で色あせている).まとまって見れるし,もうこれでいいんじゃないかという気さえしたほどだ.

考古学的資料の展示というのは,そもそも実物である必要はないのではないだろうか? というか,芸術作品だとしても,違いがわからないぐらい精巧なレプリカならそれで問題ないのではなかろうか? というのが,俺がこの町で思ったことである.そういえば,エルサレムにあったいわゆる「死海文書」の展示も,傷んできてるやつはコピーだったりしたな.あれこそ実物じゃなくても全然問題ない気がする.

ところでホテルの展望レストランで夕食を食べたとき,鶏の焼いたのを頼んだら「すいません,鶏肉を切らしてるので別のメニューにしてもらえませんか」とか言われてびっくりした.仮にもホテルのレストランで鶏肉がないってすごいな.まあ,かわりに頼んだ牛肉のシュワルマがけっこううまかったので,個人的には不満はない.というかイスラム教って牛肉もアリだったっけ.


2018-03-04(日)

サルト

旧首都ジャンルの町である.旧首都とはいえ,今となってはアンマンと全然規模が違う,ごく小さな町である.

本来,この地域で取れる黄色い石を使った建物で伝統的な町並みが形作られている,という話である.ただまあ現状ではそこまでしっかり残ってるという感じではなくて,わりと適当なコンクリートのビルも多かった.町の入口で大規模に工事していたので,そのうちもうちょっと見栄えがする感じになるのかもしれない.

観光名所としては地味すぎるし,博物館の展示やおみやげ屋なんかもすごい素朴な感じなので,外国人観光客はほとんどいない(子供たちが好奇心で挨拶してくるレベル).でもなんだか国内からの観光客がそこそこいるような感じなので,ヨルダン的にはやはり古い伝統ある町ということなのかな.じっさい泊まったホテルでは,おそらく国内からと思われる団体客に二組ほど遭遇した.

ところでこのホテルはどうも奇妙な店だった.宿泊もできることはできるのだが,なんかレストラン営業のほうがメインのような雰囲気.そもそも宿泊用の部屋は3部屋しかないようで,それはまあいいけど,レストランとして使ってるエリアと分かれていないのが決定的に変だった.つまり俺が部屋でのんびりしてても,壁のすぐ向こうで誰かがお茶とか飲んでたりするのだ.部屋自体は伝統的イメージに合わせたつくりで,なかなかよかったんだけどね.ジュースが無料でついてきたし.

そういえば某「歩き方」には「2016年現在,宿泊施設は存在しない.ゲストハウスがオープン予定」とか書いてあったけど,そのゲストハウスだったんだろうか.そう思ってみるとなんか宿泊対応の段取りも悪いようだったし,最近宿泊客の受け入れを始めたように見えた気もしてくる.


ワディ・ムーサやサルトもそうだし,サラエヴォやヴェリコ・タルノヴォなんかもそうだが,谷の周辺に広がった斜面の多い町というのはけっこうある.アンマンはその親玉みたいなやつだ.複数の谷と丘の広がるエリアにまたがって町が続いている.もちろん移動は大変に面倒くさい.ちょっと散歩する程度であれば,「立体的で面白い」ですむけど.

ただ,いまや「気楽に散歩に行ける,一般的なアラブ世界の大都市」というのは貴重になってきている気がする.ドバイとかアブダビとかはちょっとジャンルが違うよな.ほかはせいぜいモロッコの町ぐらいじゃなかろうか? そういう意味で,アンマンはわりと散歩しがいがあると思う.まあその,いわゆる観光名所的には城塞跡の丘とローマ劇場跡ぐらいしかないんだけども(でもこの二つは思ったよりしっかりしている).

途上国にはよくあることだが,ヨルダンも格差社会のようで,地区によってかなり雰囲気が違う.他所者として散歩するぶんには興味深い.中心のダウンタウンには個人経営の小さい店がぎっしり並んでいる一方,アップタウンに行ってみるとちゃんと外資チェーンとか大型モールとかこじゃれた店とかがゆったり並んでいるのだ.たとえばアップタウンの喫茶店でコーヒーとか飲むと,普通に日本なみの値段を取られるのだが,たくさん客は来てるしどんどん注文もしているようだった.

アンマンにちゃんと滞在したのは最後の3日ぐらいだ.でも,アンマンは今回の旅程のハブになっているので,それ以外の日もけっこう通過,というか短時間滞在している.何度も行ったり来たりしていたので,最終的にはこの巨大な町もなんとなく様子がわかってきた.

  • 別の地区に移動する場合,だいたい谷を越える必要がある
  • 外食はあまり安くないが,食材は外国人でもかなり安く買える
  • ダウンタウンから一番近いスーパーは,しいて言えば1st・2nd Circleの間にあるやつ
  • アブダリ地区北側は,わりとリーズナブルで利用しやすい店が多い
  • 南バスターミナル〜北バスターミナル間のセルビス(シェアタクシー)は,外人でも利用しやすい


2018-03-08(木)

無題

俺はバックパッカーとしては致命的なレベルで値段交渉が下手だ.下手というか全くできない.つうかめんどくさいんだよ.物を買うぐらいでいちいち何度もやりとりしたくないよ.

ただ,俺は高い買い物をしないので買い物についてはたいして問題ないし,宿泊費に関しても最近はBooking.com様に全部お任せなので交渉なんてしなくてすむようになった.でも,どうしても徒歩では行けない距離はあるから,これが最後の問題なのだ.

というわけで俺はバス代やセルビス(ルートの決まった相乗りタクシー)代やタクシー代を一切交渉してないわけだが,今回ちょっと驚いたのは,ガイドブックに載っている値段の目安より「安かった」という事例があったことだ.

考えられる原因としては,

  • 単に値段が変わった
  • アラブ世界では,本当に値段が固定でない場合がある
  • 値段を聞くのではなく,当然のような顔をして適当な額を出してお釣りをもらうほうが,結果的に安くすむ場合がある
あたりだろうか.まあ数十円の話なのでよくわからんが.バス代とかが「去年より安くなる」とかって考えにくいし,最初のは無いか?

なお,もちろん目安より高く払った回数のほうが多い.

2018-03-08(木)

無題

今回の機内映画のコーナー.

  • Blade Runner 2049: なんかどっかで「ジョイかわいい」とか書いてたので見てみた.たしかにジョイかわいい.幻想ひきこもり大国の日本としては,負けずに何か打ち出さねば.どうでもいいけど,この映画のスタッフでニンジャスレイヤーの実写映画とか撮れる気がするな.
  • Happy Death Day: ループもの.わりとテンポもいいし,登場人物の言動もそんなに理不尽じゃなくて見やすい.ループものがこんだけたくさんあって人気なのは,みんなそんなにやりなおしたいと後悔してることが多いのだろうか,と思う.
  • What Happened to Monday: Mondayって人名かよ.わりと適当な話なので,むしろ「誰が生き残るか」系の映画として見ると楽しめると思った.あと,サタデーとサンデーの二人は,学校行ったこともなければふだん働いたこともないんだろうから,休出とかあるとキツそうだな.
  • Darkest Hour: うーん,「ウィンストン・チャーチル」というキャラクターを堪能するための映画だな.劇中では実際には誰もたいしたことしてないし.というか,ラストの流れはホントにやったら単なるポピュリズムではなかろうか?