海月玲二

今年の夏の旅行は,各種手続き簡略化記念ということでカザフスタンとウズベキスタンに行くことにした.

この町の名前は,キリル文字的にはАлматыと綴る.このыの文字に対応するカタカナ表記が統一されていない上,そもそもロシア語とカザフ語ではこの字の発音が違うようだ.結果としてアルマトゥだとかアルマトイだとか表記に揺らぎが出てくるんだな.めんどうなことである.ラテン文字だとAlmatyと綴るようなので,とりあえず「アルマティ」で行く.

名前はともかく,ここはカザフスタン最大の町である.中央アジア最大と言うには,タシケントのほうが人口が多いか.でもこっちのほうがより普通の先進国寄りなので,ウズベキスタンよりは外人にとって滞在が楽ではないかと思う.両替所はそこらへんにあるし,スーパーやちょっとした青果店,外国料理の店なんかもたくさんある.地下鉄乗ってもいちいち荷物見られたりしないしな.

グルジア料理店なんかけっこううまくてよかった.旅行に行ったときってつい「その国の産物を食べる」ということにこだわりたくなるけど,よく考えたらあんまり気にしなくてもいいんじゃないだろうか,と最近思う.そもそもグルジア料理なんて日本ではあまり食べられないし.さらに言えば,スシバーとかタイ料理店とかにしたって,たぶん本来の日本料理やタイ料理とは変わってる(それぞれの国の常識や好みに合わせて)だろうから,別に無意味ということもないのだ.

まあちゃんとしたレストランだと多少は金がかかるので,それなりに節約した日もある.泊まった部屋の家主に「お店で冷凍ペリメニを買ってきてゆでる」というのを聞いて試してみたら,これはなかなかよかった.「だいたい味がついてるのでゆでるだけで食べられる」というのは知らんかった.

ところでこの町では,お店の表示とかそのへんで歩いてる人の話し声とかはロシア語がだいぶ多数派という感じだったのだが,国立大学とか駅とか公共施設とかだと,新しく作ったらしいカザフ語の表示プレートがわりとたくさんあった.なんというか,「こうあるべきだ」という理想にあわせて現実を変えようとするのは大変だなあと思った.



アルマティからどこをどう通ってタシケント(ウズベキスタン)に行くかは,実は決めてなかった.

1) 北ルート カラガンダ〜アスタナを通って飛行機でタシケント入り
2) 南ルート キルギス〜フェルガナ盆地経由で
3) 西ルート カザフ南部を鉄道で西に進み,シムケントから国境を越える

あたりが案だったのだが,カラガンダ(アスタナ)方面の鉄道がすでに満席だったので1案は没.なんか夏休みシーズンが終わるから混んでたらしい.2案はけっこう悩んだが,日程がやや厳しいのとフェルガナ盆地の国境は今だに渡航中止勧告なんか出てるのとで,今回は没.というわけで一番フツーの3案だ.

しかし,このルートの場合,シムケントまで時間がかかるので夜行列車を使うのが普通なのだが,これまた満席で昼の便しか席がなかった.アルマティからシムケントまで昼便で行くと,8時発21時過ぎ着みたいなけっこうシンドいスケジュールになるので,途中のタラズという町で降りて一泊休むことにした.

実際カザフスタンは国土が広すぎて,都市間の移動がたいへんなのである.
以前何かのサイトで見た記述で,「カザフスタンの地図を見てると,『ああ,この真ん中へんはなんもないんやな,じゃあさっさと抜けちゃうか』などと思うかもしれない.でも2点ほど間違いがある.ひとつ,何もないということはない.ふたつ,『さっさと抜ける』ことなどできない.距離をナメすぎだ」とかいうのがあってちょっと面白かった.

列車で乗り合わせた人たちが言っていたことによると,彼らは北部のセメイから来ていたそうだが,そこからアルマティまでまず21時間かかるそうである.
また,翌日タラズからシムケントまで乗った列車の時刻表には,アルマティから西部のアクトベまでの日程が書いてあって,乗り通すと丸3日ほどかかるようだ.

そういうのに比べれば,この程度の距離でいちいち途中下車してんじゃねえという気はしないでもないが,まあいい.ちなみに列車は二段寝台で,上の段はけっこう狭くて坐ることさえできず,けっこうな時間寝て過ごした.……そしたら次の日タラズから乗った列車はもっとアレで,なんと寝台が縦に三段だった.もう登るのも面倒なので,荷物だけ置いて廊下の席でずっと座っていた(こっちは4時間ほどだったので).



2018-08-30(木)

タラズ

ここは俺のブログなのでちょっと自慢をすると,俺はほんの少しだけロシア語ができる.そこで,探してるホテルの場所をそのへんの人に聞いてちゃんと情報を得たり,英語のほぼできない駅係員となんとか意思疎通して次の日の切符を買ったりしたのが,タラズ滞在のハイライトである.英語が通じにくいのは旧ソ連地方都市の醍醐味だ.

というかタラズは一泊しただけであり,そもそもどんな町なのかさっぱり不明なのだ.なにしろタラズの鉄道駅は町の中心部からだいぶ離れているし,滞在したのは17時〜翌朝9時ぐらいまでだし.めんどくさかったので,駅周辺を散歩しただけである.ウィキペディアで見たところによると,世界史の「タラス河畔の戦い」がこの近辺だったらしい.へー.

散歩のあと駅前のスーパーでビールとかサモサとか買って,ホテルでゲームしながらビール飲んだりしていたらわりと楽しい気分になったので,我ながら全く適当なことだなと思った.

俺の旅行はバックパッカー寄りなので,特に一人のときは,「別にたいしたことしてない日」の出現率が上がる.最近はわりと適当なホテルでもHDMI端子を備えたテレビがほとんどなので,raspberry piは外こもりのお供にいいよ.軽いし.



シムケントはまあまあでかい町だが,観光名所があるわけではない.ここに観光で来る人というのは,おそらく周辺の遺跡だとかを見にきているのである.周辺の見所はいくつかあって,その中でも一番有名だと思われるのがトルキスタンにあるヤサウィという人の霊廟だ.

イスラム式の巨大な霊廟なんだが,まあその,単にこういう雰囲気のものが見たいだけ,というならウズベキスタンに行ったほうがいいと思う.宗教上の目的というか巡礼先として来るんなら意味があると思うけど.じっさい,建物の奥のほうにヤサウィの墓本体が見える場所があるんだけど,そこでお祈りしてるひとはけっこういた.

あーでもアレだ,同じエリアにある半地下のモスクはちょっと変わってておもしろいと思った.あと,霊廟のうしろ側にすごい荒地が広がってるのは何なんだろう.発掘調査中なのか?

ところでトルキスタンはシムケントとは別の町であり,160km離れている.つまり大阪−名古屋間に近いぐらい離れており,日帰りってどうなのという気がしなくもない(ホテルの人にトルキスタンにどう行くのか聞いたら,一瞬「えっ」って顔をされた).でも道はまっすぐで車はかなり飛ばすため,実際は片道2時間ぐらいで行けるのである.

シムケントとトルキスタンのバスターミナルに行って「バス」に乗るわけだが,そのバスと称するのは実際にはちょっと大きめの乗用車に過ぎない(大型バンですらない).これはシェアタクシーと言うんじゃないかとも思うが,バスターミナル間を行き来するだけなのでやっぱり「バス」なのかな.

あとシムケントのバスターミナルは郊外にあるし,しかも複数あるのでわりと面倒だ.普通「サマール」というバスターミナルからトルキスタンに行くのだが,帰ってきたら全然別の「ベクジャン」というバスターミナルに下ろされた.てきとうに中心部に行くらしい市バスに乗ってみたら,見覚えのあるエリアに戻ることができてやっと一安心である.