海月玲二

香港に来たのはなんと実に17年ぶりだ.前どうだったか記憶は怪しくなっており,まず旺角のすごい人口密度に圧倒された.空港からバスで到着したのはもう午前1時を過ぎていたのに,昼かと思うぐらい人が歩いていて驚く.そして次の日の昼にはラッシュアワーのように人がいた.つまり,夜中の人数は,あれで「減っていた」んだということに気付き,二度驚いた.

空港からまず旺角に行ったのは,宿泊先がそこだからだが,別にランガムプレイスのところのホテルとか泊まったわけではない.今回は時期が悪く(旧正月直前)ホテルがどこも高かったので,安宿に泊まってみた.香港(というか九龍)での安宿というのは,つまり,巨大な雑居ビルの一部を「ホテル」と称して管理しているだけである.ビルの入口に小さく看板が貼ってあったりする.

さらに,今回泊まったところは「そもそもスタッフを常駐させてもいない」という豪快なスタイルだった(一応,昼に掃除の人はちゃんと来ているようだ).ホテルの管理するエリア入口と,それぞれの個室の入口にナンバーロックがあって,事前にメールとかで送ってもらった暗証番号を入れると入れる仕組みだ.おそらく毎回番号は変わっているんだと思うが,部外者とかを勝手に入れてしまえるので,原理的に多少不安ではある.ただ,ビル内でホテルとして営業してるのは3つだけだったし,もともと人の出入り自体がそんなにたくさんではない.ビル自体の入口には管理人部屋もあったし(いつも誰かいた),まあそこまでアレでもなかろう.ともかく,この時期の香港中心部で安く泊まってるわけだし,多くを期待するのは無茶である.

あと香港は物価が高いので,貧乏人としては食事もけっこう大変だった.ちょっとした食堂で食べても,一人一回40HKDは越えてしまう感じ.選択肢は多いし,いろいろおもしろい食べ物も多いんだけどね.住居費も高いし(それに伴ってキッチンが貴重だし),香港の生活はいろいろと工夫しないと大変そうである.まあ,こんなにたくさん人が住んでいるということは,何かしら稼ぎようがあるのだろうけど.

というか,最近の香港はあまりいいことがなくてテンション下がってるみたいな話も聞くけど,町はけっこう活気があるようだった.旧正月前だからだろうか.個人的に関心したのは,今でもPC部品関係の店がわりに賑わっていたことである.日本ではすっかり見なくなった光景だ.ゲーム需要かとも思ったけど,ゲーム機の店はそれはそれであるしなあ.


この日は香港郊外のいわゆる新界に行ってみた.ルート的には錦田から元朗に行き,あと天水囲周辺の歴史的遺産もちょっと行った感じ.見どころ的には錦田の城壁村がわりとしっかり残ってて,わかりやすくてよいと思う.天水囲からの歴史的コースは多少案内が悪く,きつめの日差しの中で道に迷って少し苦労した.ひとやすみしておやつに老婆餅を食べたら,すごくうまく感じたことである.

新界は九龍とは全然違って,すげえ空が広い.町と町の間には何もない道路が続いている.大型犬を飼ってる人だって見かけた.というか正直,「なんでみんなこっちに住まないんだろう」とさえ思った.元朗や錦田からでも九龍に2〜30分だし,通勤できるんなら明らかに住環境の悪い九龍に住む必然性はないような気がする.ちょっとした買い物とかなら,元朗にも十分お店が並んでるし.……調べてみたら,そもそも鉄道が開通したのが21世紀になってからで,それまでのバスはけっこう不便だったのか.ふーむ,そしたら,そのわりには新界ニュータウン群は発展しているということになるのかな.

あと,新界ってけっこう場所余ってるじゃん? なんで九龍と同レベルの高層マンションを建てるんだろうか? もうちょっと住みやすそうな建物を作る余地があると思うんだけど.香港人はアゴラフォビアか何かなのか? それとも経済的な理由とか政治的な理由とかあるんだろうか?

ところで,元朗のショッピングモールに入っているスーパーは,信じがたいほど日本製品にあふれていた.日系スーパーなんだろうか? 外国で「山下うどんのお持ち帰りパック」など見たのは始めてだ.香港に限らずアジアの町では日本製品がよく流通しているけど,あれは日本企業が一生懸命売りこんでいるのか,それとも現地の業者が一生懸命仕入れているのか,どっちの傾向なんだろうか.香港ですら,いまだに日本製品にそこそこいいイメージがあるようなのは,なんか不思議な気がする.


今回使ったLCCは香港エクスプレスだ.なんか妙に日本の空港にたくさん飛んでおり,どうも「香港在住の人が日本に遊びにくる」という感じの航空会社である.乗客の大半が香港人であり,すごいアウェイ感だった.関空行きの搭乗ゲートにほとんど日本人がいない,という状況ははじめて見た.

あとやはり,大阪に遊びにくる人達は大量におみやげを買う傾向にあるようで,明らかに関空→香港便のほうが機内の手荷物が多かった.LCCなので,多少多くても全部機内持ち込みに収める人が多いしね.係の人達が全部ちゃんと棚に収めるために右往左往しており,しまいには俺のかばんを取りだして「スーツケースがどうしても入らない人がいるので,このかばんの人は足元に置くようにしてください」とか言い出す始末.というか,その後から来たスーツケースは明らかに持ち込み制限を越えて重そうだったけど,そこはいいのか.

逆に香港→関空の便はみんな荷物もそんなに多くなくて,わりとすぐにおさまっていたし,出るときもそこまで手間取らない感じだった.さらに,関空での入国もほとんどが外国人の列に行くので,日本人はほぼ待たずに入国できてしまった.着陸からロビーに出るまで30分を切ったというのははじめてだ.後ろのほうの席だったから,時間的には多少不利だったはずだけど.

運転も荒っぽいしいろいろ適当な感じもしたけど,まあLCCなので気にしない.