海月玲二

今回Yが到着する空港はビリニュス(リトアニアの首都)である.クルシュ砂州でもたもたしていてあまり時間の余裕もなかったので,ニダから一気にビリニュスまで移動してしまうことにした.クライペダまで1時間,そこからビリニュスまで4時間という感じ.ロシアに比べて超らくちんだった.バスの中のwifi接続も安定して速いので,その日の宿泊先を予約したりもできる.

前回ラトビアとリトアニアに来たときは,先にリーガに滞在してその後ビリニュスに来たので,ビリニュスはわりとボロくて適当な感じの町だなと思った.しかし今回カリーニングラード方面から来ると,ビリニュスが大変ご清潔な大都市に見えた次第である.以前ブダペストについても似たようなことを書いた覚えがあるな.

一旦来たところに再訪すると,観光名所をチェックしようと必死にならなくてもいいという安心感がある.今回はYも来たことある場所なので,旧市街の名所とか完全スルーで飯食ったり買い物したりとか,どうでもいい過ごしかたをした.Yの趣味の手芸用の布地買ったりとか.あと大聖堂の前の大通りで何かのお祭をやってたので,出店を眺めたり軽食を食べたりした.

さらには休養時間もここで入れている.つまりYが到着するのは昼過ぎの便だったので,午前中は部屋でごろごろゲームしてたのである.Raspberry pi+ポータブルモニタのセットが大活躍だ.

このとき泊まってたのはちょっと面白いところで,レトロな感じの内装で統一されたアパートの部屋だった.落ちつく雰囲気でとてもよかった.しかも小さいながらもキッチンやバスルームもちゃんとついてるし.さらに,朝になると何か猫の声がするので,ドアを開けたらふさふさした猫が入ってきて,ごはんくれ顔で歩きまわりだした.そういうのは飼い主のとこ行けよ.



ビリニュス近郊にある湖の中にある,小さな町.古い城があることで有名なので,わりと観光客も来るところだ.

よく見られるパターンだが,城の中は博物館になっている.その中でも,ここは展示がなかなか充実してるし,お城の元々の構造がほどよく楽しめるようになっている.この手の建物としてはけっこうお勧めできるんではないか.時々ある,外観だけ古い城なんだけど中は完全にコンクリートのビル的な作り,というのはちょっともったいないと思う.建物の構造や内装自体も展示の一部として再現してほしいところだ.

お城のある島から橋を渡ってすぐのところにはお店が並んでいて,ここの郷土料理のキビナイとかいうのを食べたりできる.これはつまり,ピロシキの皮を固いパイ生地にしたような料理だ.中身がいろいろ選べるけど,ポークキビナイを試してみたら味の雰囲気が551のアレだった.

なお,もちろん別にトラカイに来なくても,他の町でもキビナイは食べれる.たぶんそんなに違わない.

ここはお城と湖の観光で成り立ってる感じの小さな町だが,それでも学校やらスーパーやら床屋やらの一般的な施設もちゃんとあって,ふつうの町としてもちゃんと機能している感じだ.たまにある,ホテルとかおみやげ屋しかない旧市街みたいな感じではない.散歩するぶんにはもちろんこのほうが面白い.近所のおばちゃんたちが教会に集まってたのを見て,やっぱりリトアニアだなあと思った.

どうでもいいけど,某ガイドブックが「トゥラカイ」という表記をしているのがどうも気になる.「トラ」だろうが「トゥラ」だろうがtraという綴りの音とはどうせ違うんだから,見慣れない表記はやめたらいいのに.



リトアニア北部の中心都市だ.観光客がこの町に来るというのは,事実上いわゆる「十字架の丘」を見に来るということだ.ほかにもいちおう名所らしきものはあるけど,そのためにわざわざ行くようなものではない.で,その,十字架の丘であるが,正直これは出オチの類のような……いやまあ,歴史的意義はあるんだろうと思うけど.思うけど.他所者がわざわざ見に来てどうこう言うようなものなんだろうか.

えーとそれはともかく,ビリニュスからリーガに行く途中でここに寄ったので,めんどくさいから一泊した.とてもがんばればその日のうちにリーガまで行けなくはないだろうけど.

泊まったところはアパートメント形式の部屋で,妙に広くてキッチンもフルスペックであった.せっかくなので,この日の夕食は自炊にしてみた.いや,ほんとのこと言うと,時期のせいかシャウレイの町にどうも活気がなくてわざわざ外食する気が起きなかった,という話だけど.去年教えてもらった「冷凍ペリメニ(水餃子みたいなやつ)を買ってきてゆでる」に加えて,黒パンとサラミやチーズを買ってオープンサンドなど作ったりした.バルト諸国では黒パンがうまいのだ.

現在のところ,旅行中の「自炊」でやったことがあるのは,せいぜい包丁か熱湯が必要なところまでである.そのうち,「煮る」か「焼く」のどっちかが入るパターンに挑戦してみたいと思う.

関係ない話.バスの時間の都合が悪くて十字架の丘までタクシーを使ったので,戻ってきてからリーガに行くバスに乗るまで数時間あいてしまった.そこで,「猫の博物館」なる施設に行ってみたところ,これが実質「ひとり3ユーロで触り放題の猫カフェ」という状態だったので,なんだか得したような気分になった.もちろん,展示自体はそんなどうこう言うようなものではなかった(絵のコーナーとかはちょっとだけ面白いかな).

関係ない話2.この町のバスターミナルの切符売場は19時に閉まる.某ガイドブックは「20時に閉まる」と書いてあったのだが,念のためちょっと早めに着くようにしてて助かった.あぶないところだった.



ラトビアに入り,引き続き観光だ.ここはリーガ(首都)から1時間ぐらいで来れるリゾート地である.

川が作った谷に面していて,谷を渡った反対側の集落はトゥライダという別の名前になっている.もともと川の両側は別々の領主の支配下だったそうだ.ただ現在では町と言えるのはシグルダのほうだけで,トゥライダは良く言っても農村である.まあ,シグルダのほうもいちおう町ではあるけど,なんかこう木が多くて公園みたいな町だった.鉄道の南側にはもうちょっと建物があるようだけど,グーグルマップで見るかぎりはやっぱり間隔が広くて木が多いな.

ガイドブックには「やはり谷を渡ってみるべき」みたいなことが書いてあるので,試してみたらなかなか大変だった.問題は,トゥライダ側の観光エリアはほぼ自然公園のノリなので,「町を散歩する」というよりは「近所の山にハイキングに行く」という体でのぞむ必要があったことだ.

あまり何も考えず出発したため,シグルダ側で城跡や教会を見たりロープウェーで対岸に渡ったりしてる間はよかったのだが,後半体力が尽きてしまったのである.森の中や坂道を歩くので体力を使うことに加え,お店やレストランなどの設備がほとんどなく補給ができなかった.

さらに,最後にトゥライダの城に到着して見物しようとしたら,ここの建物がどこも3〜4層ぐらいの構造になっていて,階段を登るだけでもだいぶ大変だった.あと城の中の展示が正直イマイチだったのも徒労感があったことである.文章や図のパネルを主として展示を構成するのは下策であって,そもそも情報だけなら別に現地で見る必要はないと思うんだよね.

最後にトゥライダからバスに乗ってシグルダ駅まで行き,そこから鉄道でリーガまで帰る予定だったのであるが,バスの本数は少ないしリーガへの列車はなぜか30分ぐらい遅く時刻が変更になっていたので,これまた想定より時間がかかってしまった.やはりお弁当でも持っていくべきだった.



ここはYも一度来ているはずなのだが,あまり印象に残っていないという.まあいわゆる「日本人のイメージするヨーロッパの町」みたいな感じであって,あまり変わった特徴はないかもしれない.

しかしそんなY氏でもリーガ中央市場は記憶に残っていたらしい.飛行船格納庫の建物を元にした巨大なやつが何軒も建っててインパクトでかいからな.そもそも市場を見物するのはわりと好きなので,そのときも中まで見物したはずである.

今までは市場に行っても「面白そうだけど旅行中に食材とか買ってもなあ」とか思って特に何も買わないことが多かったところ,今回は,ためしにいろいろ買って食事をしてみた.そもそも,よく考えたら市場では計り売りが基本なので,食べきれるようにほんのちょっとだけ買うことも別に可能なのだ.まあ,ラトビア語は全然わからないし,ロシア語も複雑なことはわからないので,チーズの種類だとかはヤマカンであるが.あとチーズを買ったら何か謎の液体をかけてくれたけど,何だったのだろう.かけたほうがコクがあってうまいのはわかった.

シャウレイで食事をしたときも思ったけど,食事を分けたりできるというのは複数人で旅行することの明白なメリットだな.一人は気楽で好きだけど,食べきれる量が少ないので,どうしても楽しめる食事のバリエーションが少なくなってしまうのだ.

ところで二度目だけど観光も全然してないわけではない.わざわざ運河を回る遊覧船に乗ったりした.お高いけど楽でそこそこ楽しいぞ.あと旧市街の「三人兄弟」なる古い家を見物してみたら,中でやってた展示が思ったよりよかった.ソ連時代のリーガのいろんな地区の変遷についてやっていて,60〜70年代の地図がいっぱい出てて面白い.やはり展示というのは展示するもの自体が面白いとかたくさんあるとかが大前提で,言葉による解説はあくまで従なのだ.



今回の主な旅程はグダンスクinリーガoutにもかかわらず,実は日本からの航空券はストックホルム往復である(これだけ安かったのだ).ストックホルム→グダンスクはSASの飛行機に乗ったけど,リーガ→ストックホルムはフェリーに乗ってみることにした.一泊分の宿泊も入るわけだし,普通の船室(いちおうシャワーもついてる)ならそうやたらに割高なわけでもない.

同じ感じの船としては,以前に乗ったヘルシンキ−ペテルブルク便と比べると,エストニアの会社のせいか多少きれいでお店も充実していた.まあでも,別に俺は免税店であれこれ買いこむわけでもないし,夕食バイキングは同程度だったと思う.俺らは今回もバイキングで元を取ろうと,いじきたなく何度か往復したけども,ほかにあんまりそういう人はいなかったね! あ,でも,明らかに高そう(おいしそう)なローストビーフだけ速攻で無くなってたのはちょっと面白かった.

というか,そもそもバイキングの席はかなり空いていたし,ほかのレストランやカフェテリアも同様だった.実際経営とか大丈夫なのか心配になるほどだった.この日は9月に入ったばかりの平日だったし,客自体が少なかったんだと思う.9月に減便するような設定になってなくて,俺は助かったけどね.

ペテルブルク便に乗ったときも「甲板に出ると寒いなあ」と思ったものだが,今回はそんなものじゃなくて,海に出てからは船室にいても寒かった.夜遅くなってくるとだんだんマシになってきたので,暖房を入れたんだと思う.そして暖房が効いてくると,今度は空気が乾燥してきてそれはそれでちょっとつらいのだった.9月はじめなのに,冬みたいな話だ.