鹿児島の義弟夫婦宅で一泊した翌日、大人4名+子供3名は2台の車に分乗し、まずは知覧町の「特攻平和会館」へと向かった。

知覧と言えば昭和20年の特攻隊最前線基地である。かつてTV番組などで有名になった「自分はホタルになって必ず帰ってくる」という特攻隊員の話の舞台となった「富屋食堂」でも知られている。会館内には、種々の戦闘機や1000名を超える彼らの写真や遺書、遺品などが展示されている。中央では70〜80歳代とおぼしき男性が観光客相手に大声で解説していた。

コーナーで仕切られている出撃順に並んだ彼らの写真と肉筆の遺書(一部はコピー)の展示ブースを見ながら、私はやおら迫ってくる圧迫感とこみ上げてくる感情とを抑える事ができなくなった。それについては別の機会に「My OPINION and JUDGEMENT」の方に書いてみたいと思う。それほどの衝撃を受けた。

次に我々が向かったのは、宿泊地の日当山温泉「スパホテルYOU湯」である。ここは霧島市に統合されたため、いわゆる霧島温泉郷と間違えやすいが(実際私は間違えた)、温泉郷より南でむしろ鹿児島空港に近いロケーションだ。だが、かの西郷隆盛をして「天下の名湯」と言わしめた独特の泉質を誇る温泉である。

泉質は炭酸水素塩泉で、透明で臭いはない。特筆すべきは、入った瞬間から肌がスベスベになり、上がった後も持続するという事だ。霧島温泉とは全く異なる泉質で、鹿児島ではここだけという。当然循環なしの源泉掛け流しで、内湯の他に露天風呂まで備える。1泊2食付で大人9800円のプランもあり、霧島温泉郷よりかなりリーズナブルでもある。義弟が用意してくれた幻の古酒焼酎「天使の誘惑」を飲みながら、ボリューム満点の夕食に舌鼓を打ったのは言うまでもない。

翌日は一転、霧島「高千穂牧場」へ。山肌に沿って作られた商業牧場だが、入場料も駐車料も無料というのがいい。子供たちは牛や羊や馬やウサギと戯れ、妙においしい生乳ソフトクリームをほおばる。大人たちはせっせと買い物に勤しむ合間、カルーアミルクに似た、牛乳とラムやブランデーを原料としたオリジナルリキュールの試飲に余念が無い(ウマい!)。

山の上にもかかわらず風も無く暖かな日だった。点々と植えられた桜も満開で、ここに限らず鹿児島には桜が多い事に気づき、その美しさに心が安らぐ。そういえば平和会館への道にも靖国神社と見まごう如き見事な桜並木があった。

  足早の 春の息吹を尋ぬれば 咲く喜びに散る覚悟   Chaie