晴れ。
中島みゆきのニューアルバム『転生 TEN・SEI』の発売日だったので買ってきてもらう。
転生
中島みゆき 瀬尾一三
- 遺失物預かり所
- 帰れない者たちへ
- 線路の外の風景
- メビウスの帯はねじれる
- フォーチュン・クッキー
- 闇夜のテーブル
- 我が祖国は風の彼方
- 命のリレー
- ミラージュ・ホテル
- サーモン・ダンス
- 無限・軌道
この『転生』は通算33枚目のオリジナルアルバム。2004年1月3日〜28日に渋谷Bunkamuraシアター・コクーン上演された「夜会VOL.13 24時着 0時発」で演奏されたオリジナル曲のなかから11曲を選び新たにレコーディングしたもので、何曲かは当時の夜会とはアレンジがかなり違う。ただし全体的なイメージは変わっておらず夜会の雰囲気そのままが楽しめる仕上がりとなっている。かなり骨太で、演劇的にドラマチックな広がりのある世界だ。
アルバムタイトル「転生」は中島みゆきがテーマとしてたびたび取り上げている輪廻転生の「転生」であり、この「夜会VOL.13 24時着 0時発」はまた宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフの一つとしている(レビューとして、がくしさんの夜会Vol.13 "24時着 0時発"が秀逸だ)。
なお2006年1〜2月(東京)、4〜5月(大阪)のスケジュールで「夜会VOL.14 24時着 00時発」として再演される。
アルバム収録曲から、「命のリレー」(歌詞)は、11/24からのフジテレビ3夜連続特別ドラマ「女の一代記」(http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2005/05-286.html、http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/report/051004onna.html)の主題歌になっている。短い歌詞ながら、舞台はいきなり宇宙であり、輪廻転生を納得させるかのように太い声が繰り返したたみかけるのだ。
この一生だけでは 辿り着けないとしても
命のバトン掴んで 願いを引き継いでゆけ「命のリレー」より
夜会のモチーフである『銀河鉄道の夜』はもとより、賢治の「春と修羅・序」(わたくしといふ現象は 假定された有機交流電燈の ひとつの青い照明です
…)が強く想起されるこの歌詞。引き継ぐ「願い」とはなになのか。引き継いでいく人々は誰と誰なのか。強い歌声に説得されるように考えてしまう。不快な強さではない。強くて深い。そして冷たいようでいて暖かい。継がせるべき相手がいないのではないか、と不安におののいている人間にも救いをさしのべる。誰かから何かから自分にリレーが渡され、自分もまた誰かや何かにリレーを渡していくのだ。思いがここにあった、ということだけしか残らないかもしれない。ここにいた、ということも後世には残らないかもしれない。それでもただ、今、この思いがこの空気のなかにあったことは確かに残っていくのだ。