久々の本降りだった日曜日の雨と、あがった後の肌寒さが新鮮に思えたのもつかの間、本日またも猛暑再来である。37℃はいったかも。

オリンピックの野球が調子いい。最強レベルのキューバにも勝って、今の所負けなしである。メンバーすべてをプロで固めた成果だと思うが、間違って他国のアマ中心のチームに負けでもしたら、日本のプロ野球の問題にもなる。

だからというわけではないが、意外にも興味を持って生中継で見たのは初戦だけであった。なぜなら、勝って当たり前状態なのだからハラハラドキドキ感が極めて薄いのだ。まして夜更かしの危険を犯してまで生で見る必要性も感じなかった。

そして違和感も。プロの参戦が認められているとはいえ、プロ野球がある国は限られているし、アマとの格差は歴然なスポーツである。舞台のアテネは野球に対してさほど熱中しないヨーロッパだ。そのせいか、アメリカもメジャーリーガーチームを派遣していない。日本だってペナントレースのヤマ場だ。金メダルだけがプロチームの理由だとしたら、やっぱり違和感が。

バスケではNBAのドリームチームが負けた。野球でもそんな大番狂わせがあるかもしれない。でもそれは所詮イレギュラーであり、通常ではあり得ない事なのだ。それを期待して見るというのなら、それはそれでブラックジョーク的見方だろうけど。

今回の野球は、決して力の接近したもの同士の手に汗握る戦いではない。同じ野球なら夏の甲子園の方がよっぽど面白い。

言ってるそばから負けるなよな〜、野球。逆にようやく勝った女子バレーにホッケー。ホッケーのメンバーにはウチの社員がいて、密かに応援している。あ、そうそう、遅かったが男子サッカーもか。

卓球愛ちゃんは4回戦負け。15歳での経験としては上出来だろう。柔道は絶好調のようで、男女共メダルラッシュ。こりゃ今日以降もその勢いは続きそうだ。男子体操団体の金メダルも大快挙である。ここまでの日本勢、予想以上の出来だと思う。

そんな中の北島康介。平泳ぎ100m&200mのダブル金メダル。日本水泳史上初、これはすごいの一言である。驚いたのは、彼のインタビューの言葉からは感情過多な発言も出なかったし、逆に変な謙遜も出なかった事だ。特に200mの後のインタビューでは、まるでF1の常勝シューマッハの如く、当然の結果とも言わんばかりに落ち着いた態度で、勝利分析さえしていた。

彼のバックには「チーム北島」というデータ解析専門集団があり、現地の映像もいち早く取り入れ、即時フィードバックしている。昔のような精神論に支えられた師弟関係で戦う事はなく、理想のフォームでマシンのように正確に泳ぎきる事を目的としているという。

それでも彼の精神の保ち方、レースでの集中力は日本人離れしていると思う。前にもこのDiaryに書いたが、技術を結果に結びつけるためのメンタリティーの優れたお手本ではなかろうか。

我が目を疑った。

帰宅後、大本命の井上康生の試合を見ようとTVをつけた。一瞬、画面の井上が100kg級とは思えぬほど線が細く見えたのだ。今大会、柔道は絶好調である。出てくる日本選手の輪郭は線が力強く、しっかりしていた。なのに井上には、そのオーラじみた力強い線が見えない。

変だな、おかしいな。

予感は当たった。全く言っていいほど精彩がなく、技がキレず、準々決勝で一本負け、敗者復活戦でも。哀れなくらいの姿を晒した。

なにか大ケガを負っていたのか? あるいは病気か? 確かにケガはあったようだ。だがそれは他の選手でも同じだ。考えたくないが、プレッシャーか? まさか彼ほどの選手が?

格闘家に限らず、一見強そうなゴツイ体の人ほど、実はやさしくナイーブな性格だと聞いた事がある。そんな弱い自分を変えたくて格闘技を選び、のめり込むのだとも。

先日の泉選手もそうだが、井上も見かけとはうらはらにやさしい目をしている。きっと普段は物静かな穏やかな人なのだろうと思わせるものがある。試合では、だから精神力を極限まで高める必要があるし、それが勝敗を左右すると言ってもいいのかもしれない。

練習や稽古と言うと、肉体の強さを得るのが第一義のイメージがあるし、実際そうだろう。精神力は敗北や挫折の経験から強くなると言われるが、はたしてそれだけでいいのか?

敗北や挫折からは「なにくそ!」という奮起の強さは得られるかもしれないが、重圧・緊張が降りかかる場面で、リラックスできる強さは別のものだと思う。

自分をコントロールする事のなんと厳しく困難な事か。

ちょっと仕事が忙しくてDiaryをサボっていたら、オリンピックも進み、数々のドラマも生まれていた。

女子競泳800mの金メダルは、自由形だけに価値あるメダルだ。女子マラソンは苛酷な暑さにもめげず野口が金メダル。金メダルはひとつしかないだけに、結果として高橋尚子が選ばれなくても正解だったと言える。電光掲示板表示ミスだの疑惑の判定だのと問題の多かったレスリング。伊調姉は銀、浜口は銅だったが、吉田、伊調妹の金は見事だった。男子も疑惑の判定と言うより誤審で笹本が涙をのんだ。

野球は意に反し銅メダル。オーストラリア戦では、逆転のチャンスなのになぜウイリアムスvs藤本の阪神対決をさせなきゃならなかったのか。代打はいなかったのか。今思えば、日本は選手層も対戦相手のデータ解析も十分ではなく、よっぽど他国の方が周到だった気がする。

シンクロもどうにもロシアの壁を破れそうにない。柔道、体操、レスリングもそうだが、審判の判定で勝負が大きく左右される競技はとかく論議を呼ぶ。明確な決着がつきにくく、結局は審判の主観が入るからだ。技術不足もあるが、特に体操などは、自国を有利にするために他国の審判とも共謀した疑惑もある。

いずれにせよ、その種の競技の選手はたまったものではないだろう。明確に、しかも公正に勝負の白黒をつける事はスポーツ競技の根幹である。それを担う審判は極めて高いモラルと技術が求められるはずである。白黒を公正に明確にする事、日本のビジネスシーンでは、しばしば避けられがちな事かもしれないが。

見えないはずの風が見えた気がした。
台風16号の影響か、昨夜の風はうなりをあげて我が家を揺らした。台風は福井あたりをかすめているはずなのに、東京でこの強風とは。

オリンピックも終わり、やっと寝不足からも開放されそうである。男子マラソンのスポーツ史上稀に見るアクシデント(実況ではハプニングと言ってたが、あれはアクシデントである)で、30秒近くリードしていたブラジルのデリマが3位になってしまった。この選手は無名に近かったが、20km過ぎからの決死のスパートで2位集団を一時200m以上も引き離した。アクシデントを差し引いても、終盤このリードがモノを言った訳である。ブラジルに初めてメダルをもたらした彼の勇気を持ったパフォーマンスは、アクシデント後にさらに輝いた。かくも笑顔で、陽気にスタジアム入りできたのか。こんなに明るく強い選手だったとは、レース中には全く見えなかった。

一方で日本は油谷の5位が最高だった。メダル獲得を優先するあまり牽制し、いつも通りについてゆくだけで、でも結局沈んでいってしまった日本選手にも、スローペースでもあった事だし、どうせならデリマのような果敢な戦法をとる勇気が欲しかったと思う。諏訪よ、「まだもう一度走れる」などと終わった後にヘラヘラのたまうな。だったらもっと勝負しろ!

美の競演の新体操。ルックスもスタイルも抜群の選手たちの超美技は、見ているだけでも楽しい。彼女らは演技中は終始笑顔を絶やさないが、引き上げる時に素に戻る。特にうまくできなかった時などは、かなりキツイ顔になる。得点が出る前、待機席で必ずコーチと応援席に笑顔で手を振る。そしてまた素に戻る。得点が出る。思ったより悪かった時には、さらにキツイ顔になる。すかさずコーチがなだめる。そして穏やかな笑顔。あるいは涙。

笑顔と素が、感情と共にめまぐるしく入れ替る。アップになった彼女らの長い足には、演技中には見えなかったいくつものアザや傷が例外なくあった。さながら手負いの白鳥のようだ。美を求め、名誉と賞賛を手にするために支払ったであろう対価は、決して安いものではない。その上でなお、シビアな競争をしている。この競技の華やかさの裏にある、とてつもなく厳しい現実を垣間見た気がした。