昨日今日と1時間ずつ「ウェブトレーニング」の講師をやった。PCとIP電話を利用し、インカムをつけてしゃべる。お互いの画像は映らないが、こちらはひたすらパワーポイントのスライドに沿って解説をする。時折、受講者に質問やマイクを渡し、双方向のやり取りをする。チャット機能も付いている。

いずれにせよ、こんなラジオ局のDJのような経験は初めてであり、初日の昨日などは途中でバテて来るのが如実にわかった。声のテンションが持続しないのだ。通常の集合型研修であればお互いの顔も見え反応もわかるし、ずっとしゃべり続ける事も少ないのだが、このシステムでは相手の反応もなく、しゃべりの途切れは即ち無(死んだ時間)を意味する。

これに要するエネルギーは半端なものではない。間断なく1時間しゃべるエネルギーは、通常研修の2時間分に相当すると言っても過言ではないだろう。しかも受講者が聞きやすいよう声のトーンを高め、調子を強め、抑揚をつけ、そして絶えず受講者への投げかけの言葉を織り込まなくてはならない。いっそ気象情報のアナウンサーのように淡々としたしゃべりが許される方がナンボか楽な事だろう。でもそれじゃ受講者は皆催眠術にかかって寝てしまう。

幸い私の地声は大きい方で、オブザーバーからは聞きやすいと評価を頂いてはいるが、自分では到底納得できるレベルではないと思っている。しかもしゃべる内容は毎回同じ内容のシナリオだというのに。そういえば「黒門町の師匠」と呼ばれた故・桂文楽は、同じネタを高座に何回掛けても、セリフはおろか終わる時間も10秒と違わなかったという。同じ芸は常に同じである事に徹底的にこだわった人だと聞く。恐るべし。

もとよりそんな大名人と比べるべくもないが、自分自身にかろうじて及第点を与えるためには、最低でも10回はこなさなくてはならないだろう。

どんな事柄もやってみて初めてわかる事は多い。ふだん何気なく聞いているラジオ番組のパーソナリティーに、今私は最大の敬意を表したい。