さっきのTV番組で、名アナウンサーだった逸見政孝氏の半生を取り上げていた。彼がスキルス胃ガンで急逝してしまったのが13年前。今、私はその時の彼の年齢になっている。私と彼とは一回りちょっとの歳の差である。

大かたの人にとって彼をきちんと知ったのは、幸田シャーミンと共演した「スーパータイム」からだと思うが、私は違った。当時はあまりニュース番組を見なかったという事もあるが、たまたま大学の同級生の結婚式の司会に彼が来たのを見てからだった。もちろん彼には副業だったのだが、その時からそれとなく意識するようになった。その当時は取り立ててファンという訳でもなかったが。

女性にフラれた事が有名アナウンサーを目指した動機。大阪生まれとは誰もわからなかったほどの標準語を早稲田大学時代にマスター。まじめさとプライドの高さゆえの大きな目標設定。そして目標達成へのひたむきな努力。今までの私には到底できなかった事ばかりである。

その私が、生前最後の彼と同じ歳になっていた。ここまでに名をはせ富を得た彼の人生は、掛け値なしに賞賛に値する。彼の努力からすれば当然の帰結とも思える。早すぎた死も、残った側から見れば短いけれど充実したいい人生だったとも言えよう。でもあの世で彼は絶対にそうは思っていない、はずだ。

人生に貪欲なほど、己に貪欲なほど、目指す高みは果てしない。ここまでの到達点は、彼に限らずともまだまだ納得できるものではなかったのは明白だ。

翻って私。平々凡々に恵まれて生きてきて、地位も名声も無縁。でも幸いにも身体に大きなトラブルはない。事故など無ければ、たぶんまだ20年は生きるだろう。

私の希望は生涯「一研修職人」である。今の仕事を、できれば今の会社を終わった後でも取り組める機会があればと思っている。そして、このDiaryのタイトルにもある通り、せめて「熱きガンコジジイ」となって死ぬまで叫び続けたい。

もちろん今も私は逸見政孝ファンである。

ここ数日から忙しさの佳境に入った。一日がやたら短い。

仕事の本線は8月初めからスタートする新製品専任MR研修である。新規分野の専門知識を4日間かけて徹底的にインプットする。8月後半の5日間は製品知識のインプット。つまり、合計10日足らずの集合研修で必要十分な知識を習得させてしまおうという算段なのである。このハードなプログラムの策定はもちろん私も担当した。おまけに研修用の作成スライドも、私のパートだけでもすでに100枚を超えた。

その合間を縫って、一昨日は「e-ロールプレイ」の撮影だった。予め私の書いたシナリオをDr役(男優)とMR役(女優)が、TVドラマさながらに演ずるというスキル研修教材である。簡単に言えば、動画版シミュレーションゲームといったところか。受講者は場面毎に示される選択肢の中からベストの対応を選択して進んでゆく。間違えればDrの心の不満が聞こえてくるという仕掛けだ。無事にクロージングできればゲームオーバー。

それぞれの役者の表現力を目の当たりにして、さすがにプロフェッショナルだなと感心する一方で、小中学校を通して学芸会主役を張り続けた血がふつふつと燃えたぎったりもした。「オレもやれるぞ!」と。

そうかと思えば、10月に実施される営業部門の全国一斉テストの実施準備作業と事前開示問題作成も同時進行している。出題数の3倍程度の問題数を事前開示し、本番はそこから一定数出題するという方式である。全国30ヶ所で同じ日、同じ時刻で実施される。試験監督官もこちらから派遣する。ちなみに合格得点率は全科目90%以上である。

で、そのすべてを複数の部署の複数の人間と連携して進めていかなければならない。それこそ、それぞれの立場の人間の思惑とキャラが交錯する。関係者は決して性善説が通用する人間ばかりではない。私に言わせりゃ、くだらないプライドの塊にしか見えない人間もいる。逆にこれが複数の合併を経てきた会社の本性とも言えようが。

名前は外資でも国産体育会系の会社、当時は無敵のニッチ製品会社、新製品より英語力優先の会社、の3社が合体すればどうなるか?

一番有利なのは、新製品が10年も出ないながらも、その間、語学研修や海外研修を始め、あらゆる外部研修が受け放題だった英語力重視の会社出身者である。そう、英国の親会社がグローバリゼーションを進めたい限り、たとえ現場経験や学術知識が伴わなくても英語さえできれば出世はOK! という図式が成立するのである。事実、私の身近にもその手合いは多い。

だから、これから上を目指さねばならない30代前後の連中は大ゴトだ。まずはTOEIC700が目安だという英語力習得をいつまでに果たすか。その上で自分の仕事を認めさせなければ、いつまでたっても管理職への道は開かれない。

行き着いてしまった者も大変だが、後から来る者も大変なのである。

昨日はカミさんが仕事だったので、終わったら食事がてら映画でも観ようという事になり、久しぶりに大泉のOZスタジオシティにあるT・ジョイ大泉へ行った。

何を観るかという段になって、ちょうどこの日から公開される「パイレーツ・オブ・カリビアン〜デッドマンズ・チェスト」のレイトショーをチョイスした。

公開初日に観るなんて、昨年5月の「交渉人 真下正義」以来である。しかも前作や本編シリーズをロクに観ていなかったというところも同じである。さらにこの映画は3作目の公開も決定していて、すでにアナウンスもされている。近頃ハヤリのシリーズものである。

古くは「スターウォーズ」や「ロードオブザリング」、最近では「デスノート」あたりが、続編があるゆえやたら唐突な終わり方をする事で議論を呼んでいる。いくら続きがあると宣言していても、ひとつの映画作品として見れば不完全な構成だという意見である。結局、続編を見る必要性を煽っておいて、同じように観客を動員したい思惑だとか。これなら多少の駄作であっても大コケは免れる保険ともなるらしい。

カリブの海賊2も、ネタバレに過ぎぬよう簡単に書くと、クライマックスは主人公ジャック・スパロウが一人でクラーケンと戦うハメになり、船もろとも海に沈んでゆく場面。クラーケンと言えば、北欧神話やドラクエだったかに出てきたイカの化け物と思っていたが、ここではタコの化け物らしい。そういえば「テンタクルズ」もタコだったな。タコは欧米人にはデビルフィッシュとされ、好まれていないせいからか? その後のジャックの行方は分からないままである。生き残った連中が、世界の果てまで彼を探しに行く事を決意して終了。続きはカリブの海賊3でのお楽しみという事だ。

この映画は、もっと恐いアドベンチャーものだと思っていたが、案外コメディタッチのドタバタ劇に近かったという印象だ。ディズニーランドのアトラクションを意識した場面もあり、結構笑わせてくれた。それでも150分はちと長い。

全体的にはCG(とはもう言わないのかも)をふんだんに使った映像と凝ったメイクが印象に残るが、ストーリーは単純で、ジャック以外のそれぞれのキャラと役どころも予想の範疇だった。ハリウッド大作映画ならもっとハラハラ・ドキドキ、ワクワク・ソワソワさせてくれてもいいんじゃない? それにしても最近の映画の音響のボリュームは大き過ぎる。前から7列目だったせいもあろうが耳にガンガン迫ってくるので、うるさいのなんの。

映画のデキからすれば、同じく公開中の「日本沈没」とどっちを観ても大差ないような気がする。日本沈没は観る気ないけど。