リバウンドさせないダイエットのために封印したものに「とんかつ」がある。カツ丼も含め、もう2年近く食べていない・・・あそこの店以外では。そう、何事にも多少の例外はつきものなのだ。
久しぶりにカミさんを連れてその店へ昼飯に行った。実はこの店、私は20年以上前から通っていた店なのだ。場所は新宿区戸山町の国立国際医療センターの斜め前にある。私がまだ若造だった頃、この病院を担当する際に前任者が教えてくれた店である。
看板には、とんかつの店「かどや」と書かれてはいるが、どっこい創業者が帝国ホテルでの修行経験を持つリッパな洋食屋である。トンカツもいわゆる純和風ではなく、どちらかと言えば洋風のカツレツ風である。だが、キャベツとキュウリとトマト、ナポリタンならぬ平打ちパスタが添えられていて、それだけでも食欲がそそられる取り合わせだ。昔は別料金だったご飯やトン汁風味噌汁も変わらずにウマい。実はこれを食べたいがために、この病院へ熱心に通ったと言ってもいいほどだった。
この店のスゴさはそれだけじゃない。少なくとも通い始めた時期から今日まで、小さな店の内外装もイステーブルもカウンターの中の料理人達もそのままなのである! 経営は家族が主体だが、あの頃からでも勤続25年という料理人がいる。野球選手の江本氏そっくりだったので覚えているが、さすがに顔の彫りは深くなっていた。それでも他のスタッフも含めて定着率抜群の店である。
当時1000円でお釣りの来たロースカツ定食も、この20年以上の間に1300円ほどに値上がりしたが、スパイス風味の衣とほんのりバター風味の揚げ上がりの食感共々、見事に味は変わっていない。創業者から息子の時代になり、3代目は出前を頑張っているようだ。変わらぬ店で変わらぬ味を作り続けてゆく・・・食べに行く方の私はいろいろ変わってしまった。
食事が終わり、買い物がてらにイトーヨーカドー木場店へ。ついでにジャスコにも寄ろうとしたが、迷っていつしか豊洲へ。目の前に広がる広大な埋立地にマンション群。そして今話題の「ららぽーと豊洲」が見えた。けがの功名とばかりに駐車場の行列に並んだが、日曜日なのに20分ほどで入れた。
中は文字通り人でごった返していた。巨大ショッピングモールだけでも吹き抜け3階で南北に伸びている。建物をつなぐ中庭のような公園は、目の前にIHIドック跡と海。ちょうど真っ赤な夕日が沈んでゆくところだった。遠くにレインボーブリッジのシルエットが浮かんでいる。
印象に残ったのは、センターポート3Fにある「フードサーカス」という店。アジア、イタリア、アメリカなどの7店舗が一体になったフードコートである。入り口でICカードのようなものを渡され、それがオーダーチェッカーになっていて注文時に渡すと料金が記録される。最後に出口で精算して退場する仕組みだ。今風のシステムで新しいが、値段は高めだった。
あまりの人の多さに危うく人あたりしそうになりつつも、ざっと一廻りだけして帰路につく事にした。よくよく見れば、店から出てくる人たちはなぜかショップの袋を持っている人が少なかった。見には来るけど買わない姿がここにもある。バブルの頃の大量消費天国など、実感すら沸かずに未だに遠い昔話のままなのだろう。景気回復など数字のマジックにしか過ぎない。
テレビ番組の「豊洲は文字通り東京の新しい中心だ」という言葉も素直に頷けるほどの開発ぶりである。これからここに、いったいいくつの超高層マンションが建つことやら・・・でも大地震が来たら液状化と津波直撃は必至だな(笑)