『ブラックダリア』
アメリカで1940年代後半に起きた未解決殺人事件を元に、ジェイムズ・エルロイが書いたミステリを映画化したもの。ノンフィクションを元にしたフィクションですね。
映画を見る前に『ブラックダリアの真実』を言う本を読んでいまして、この本はブラックダリア事件の真犯人を告発するというもの。告発と言うか……当人は亡くなっているので、暴露という感じなのかな。
そういう本を読んでいたので(それが事実かどうかはとりあえず置いておいて)、作り物を見ている、という意識を強く持って観た映画でした。
主人公は元ボクサーの警察官。同じく元ボクサーの警官とコンビを組んで事件にあたっており、その途中でブラックダリアの事件がおきるわけです。吾郎ちゃんも月イチゴローで言ってましたが、最初の頃にあったことが最後の方でストーリーに絡んできて……というのが、本当に多い。伏線の使い方がうまいっていうんですかね。二時間がたつのがあっという間で面白かったんですが、私は吾郎ちゃんほど絶賛する気にはなれなかったなぁ(苦笑)。
でも面白いのは確かなので、R−15が大丈夫な方はどうぞ。R指定になってるのは、ちょっとエロ(直接的描写は多くはないが、お子様に見せる気にはなれない部分がある。てか、このお姉ちゃんたち何してるの?って訊かれたら答えられない)と、いくつかの凄惨な場面(死ぬシーンと死体描写)があるからだと思う。
実際にあった事件、というのを念頭において見てなかったら、40年代当時のLAを舞台にした普通のハードボイルド。事件の片付け方とか、気にならない部分がないわけじゃないです。でも実際にあった事件が元になっているからこそ、私は必要以上に不穏なものを感じてしまったような気がします。まぁ原作を書いたエルロイは、トラウマ(子供の頃に自分のお母さんを惨殺された。ブラックダリアと時期はそう離れてないはず。未解決)があるからこそ、このような題材を選んだんだろうけれど。
『トンマッコルへようこそ』
本屋で原作の表紙を見かけ、その表紙に惹かれて見てみようかと思いました。表紙はたぶん映画のポスターと同じ。登場人物たちが勢ぞろいしているものです。どうやら監督は、ジブリ映画を目指している、というか、ああいう映画を撮ってみたいと思っていたらしい。
時代と場所は、朝鮮戦争の頃の朝鮮半島。山深いトンマッコルという村で、人民軍と連合軍の兵士が鉢合わせしたことから起こる話。トンマッコルは人里はなれた場所で、どれくらい離れているかというと、朝鮮戦争が起こっていることすら誰も知らなかったくらい。軍隊などみたことはなく、火器もなく、村民は(たぶん)ポリシーではなく自然に草食。自然を大切にし、山深い(現代の私たちから見たら)不便な場所に暮らしているけれども、彼ら自身は今の生活に満足しているのです。
人民軍と連合軍の兵士はそこに争いを持ち込むのですが、トンマッコルという村の空気と、不思議な女の子に癒されて……。
あれ? そういや、あの子なんて名前だったっけ? 名前を呼ばれるシーンが2、3回しかないから憶えてないや。一番印象的な役どころなのに。
この映画、不思議なほど登場人物の名前が出てこないんですよね。私が憶えてるのは、同じくトンマッコルへやってきたアメリカ兵のニール・スミス(←彼だけは作品中でやたら名前が出てくる)と、人民軍のテッキと連合軍のピョ少尉だけ。
ジブリ映画を目指しているらしい、という話ですが、確かにそういう部分がある。確かにそういう部分があるけれども、ジブリ映画よりもこっちの方が私は好きだ。まぁもともと私はジブリ映画はあんまり好きじゃないのでー……。『トトロ』は好きだけど、『もののけ姫』はダメだった。
『トンマッコルへようこそ』は『もののけ姫』を髣髴とさせる部分があると思うのですよ。山深い里とかそれに対する考えかたとか。でも、私が『もののけ姫』でダメだった部分が、『トンマッコル』だと素直に受け入れられました。自然の大切さとか、人と人とのつながりとか。たぶん、『もののけ姫』と違って『トンマッコル』はその辺を言葉で説明してないからだろうな。気持ちの移り変わりや、村人が里を山をとても大切にしてるところや、そういう部分。言葉で説明してはいないし、声高に主張しているわけでもない。だけど大切にしているってことや、それを守ろうという気持ちがひしひしと伝わってくるのです。
もうねー、この映画は泣いた泣いた。そらもう泣きました。いわゆる「泣かせる映画」じゃないと思うし、そういう売りはして欲しくないです。でも泣きましたね。