くりす
1999-12-17(Fri)

ニアミス

 自分が読みに行っているWeb日記作者と実生活でニアミスしたことがある人はいるだろうか。

 私は今まで2度ほどそういう経験がある。知り合いの日記書きの人に仕事で原稿依頼をするとかいうのとは全く別に、全く偶然の産物だ。

 両方とも何度かメールをやり取りしたことがある人だ。一人は、その人の日記の過去ログを眺めていたら、書いてある内容から自分の勤めている会社の同じ部署に以前勤めていたということがわかってしまった。もう1人は、勤めている会社の求人に対して応募してきていて、プロフィールに書いてあった本人のサイトのURLが実は見覚えある日記サイトのURLだったというものである。

 実は私はそのことを相手に対して知らせてはいない。メールのやり取りをしていた時期はそれを知った頃よりずっと前で今はほとんど付き合いがないので、突然そういうメールを送ったら、知られた相手はあまりいい気がしないかなあと思ったのだ。

 一方的に知っているのはフェアじゃない気もするんだけど、だからといってわざわざこちらから自分の身元を知らせるのはちょっとためらってしまう。という訳で私はそうやって知りえたその人たちの個人情報に関しては頭の中から追い出すことにした。私の頭はもともとメモリ容量が少ないのでそれは簡単だった。

 そこでふと思ったのだが、逆に私の存在をそういう形で知っている人もいる可能性だってあるのである。私も転職するときは相当いろいろなところに自分のサイトのURLをばらまいたから、気づく人は気づいたかもしれない。(もっともそのサイトについてのヒントは日記本文中に間接的にしか散りばめていないのでよっぽど読み込んでる読者じゃないと気づかないと思うけど)

 そういえば転職するときは今の職場の人にkera-ma-goの読者がいる可能性はないだろうか、と思ってアクセスログを検索したものだ。一応社内からのアクセスはなかったみたいだけど、家から個人でプロバイダ経由でアクセスしてる分まではさすがにわからない。私は結局、気にするのをあきらめた。

 自分だったら知ったことを伝えて欲しいだろうか、それとも黙っていて欲しいだろうか。

 例えばオフでしょっちゅう会ったり、お互いの日記を毎日見ていてメールを頻繁にやりとりするような関係の人だったら言ってくれないのは水臭いなという気はする。でも、そこまで親しくない人だったら、私が迷ったようにその人の気持ちの迷いもわかるから、必ずしも伝えてもらうべきだとは思わない。

 それよりもむしろ重要なのは、伝えない場合に「知らない」という姿勢を完璧に貫き通してくれるかどうかだという気がする。

 今はその2人ともここを読んでいないはずだし、私もその2人の日記を読んでいないからこんなことを書けるんだけどね。でもそういう時他の人たちはどうするのか、どうしたいのかということがちょっと気になっている。
 電子メールの利点として、留守番電話と同じく相手の時間を邪魔しないという点がよくあげられる。奥ゆかしさをよしという価値観だ。

 私は最近Web日記というのはそれにもまして奥ゆかしい手段ではないかと思うようになった。

 メールを出すと、どうしても相手に対して読んで欲しいという意志が見えてしまうものだ 。(というか相手に伝えたいことがあるからメールを出すわけだが)

 そこまで押し付けがましいことはしたくないけれど、目に留まってくれたら嬉しいな、というようなことをWeb日記中にメッセージとしてたくしておくと、相手がもし自分の意志でそれを読みにきていてくれた場合にのみそれが伝わることになる。

 もちろん読んでもらうことを前提としてるのはただの傲慢だけれども、最近メールのやり取りとかしていないあの人の目に留まればいいな、というようなぐらいの気持ちで書いたメッセージがちゃんと相手に伝わって、何らかのレスポンスがあった場合、その嬉しさは格別だ。

 Web日記というもののスタンス自体、誰かを捕まえてまで聞かせたいわけではないけれど、もしも他の人が自発的に読んでくれたら嬉しいな、ということをそっとつぶやいているものだと思う。

 以前も紹介したWeb日記作成サイト、さるさる日記は、既に登録数が9000件に迫る勢いだ。Web日記というのはどうもかなりのブームを引き起こしているらしい。

 Web日記を書いているというと、とかく自己顕示欲が強いとよく言われがちだ。だが、意外に、前述した奥ゆかしさが日本人の性にあって、そこまで盛り上がっているのではないかと思ったりする今日この頃である。