他部署の同僚からの話である。

今年の1月頃から、その同僚の部署の女性社員のお腹が大きく目立ち始め、妊娠している事がわかった。「オメデタ」には違いないのだが、ちょっとワケアリなのである。

その女性は30代で結婚歴はあるが、今は独身の一人暮らし。だが、相手を上司にも明かさず、妊娠も結婚を前提としたものでないと言う。つまり、このままシングルマザーになるつもりなのだ。

相手は家庭を持っているのかどうかもわからないので、不倫か否かは定かでない。でも認知はするらしい。当然、彼の部署では相手が内部の人間かそれとも外部かという下世話な話で持ちきりになった。残念ながら内部の人間によるケースも少なくないのがこの会社の現状でもある。

出張の多い部署だが、今の彼女はそれもできない。普通ならとっくに寿退社でお産に備えている時期だろうに、それでも6月から産休に入るのだが、生活がかかっているので育児休暇は取らず、出産後すぐに職場復帰すると言う。実家はいろいろとたて込んでいて、親のサポートは受けられないそうだ。

酒癖があまりよろしくない事もあった彼女だが、今回の事が理由かどうか、昨年来禁酒している。好き嫌いを含め、元来モノをハッキリ言うタイプなので、今回の事も彼女なりの信念を持って臨んでいるのかもしれない。

「誰に何と言われようが、私はいいの。私は子供が欲しかったんだし、好きな人の子供を生んで育てるの」彼女ならそう言いそうな気がする。

それはそれで彼女の選んだ人生だろう。だが、インテリジェンスを発揮する職種に携わっているわりには、あまりに衝動的に過ぎやしないだろうか。常識から逸脱している状況だからこそ、感情に溺れず取り得る選択肢を冷静に吟味し、クレバーな選択をすべきだったと思うのだが・・・。

自分は納得ずくでも生まれてくる子は別である。自分ひとりで仕事と育児をこなすのは芸能界や自由業であれば可能かもしれないが、会社員という現状では相当難しいだろう。託児所一つ取ってみても大問題だ。

今日も彼女はかなり目立つようになったお腹でフロアを歩き、相変わらず通りの良い抑揚の効き過ぎる声で受け答えもしているという。私にもその様子が目に入った。

酷なようだが、そんな彼女の姿は、自らの不徳による醜態を周囲に晒し続けているようにしか私には見えない。