そろそろ家に置いてある日本酒がなくなってきたので、ネット通販ショップをいろいろと見て回った。そこでたどり着いたのが下田の「つちたつ酒店」だった。

私の目的は、まずは適正価格で手に入れる事と送料節約のためにできるだけ一つのショップでほしい酒が賄えるという事だった。その条件に最も近いショップがここだったのである。

まずは、私のテーブルワインならぬ常飲酒とも言うべき「鷹勇 純米吟醸なかだれ」である。10年以上も前に初めてこの酒と出会った時、「うまい酒の基準は名前でも値段でもない」を身をもって知った、文字通りカルチャーショックを受けた酒の一つだった。おまけにこの「なかだれ」は、純米大吟醸の香りと風味がありながら一升瓶で3000円強というコストパフォーマンス抜群の一本である。まずは文句なしにこれを押さえた。

次は、件の「沙蘭亭」閉店以来、久しく飲んでいなかった「醸し人九平次 純米吟醸 雄町 生」の四合瓶。名古屋にいた時分、そこの一流料亭の女将でも知らなかった名古屋市内の蔵で造られている銘酒である。10種を優に超えるアイテムの吟醸酒を出している事から、私は秘かに九平次を「尾張の十四代」だと思っている。私はもともと原料米の「雄町」のふくよかさが好きだったので、今回の九平次はそれにした。

3本目は、これも最近お目にかかっていなかった石川県の「獅子の里 純米大吟醸 愛山」の四合瓶に決定。この「愛山」は、十四代でも使用されている豊かな香りと味に奥行きのある原料米である。名だたる酒造メーカーのひしめく石川県にあっても、この蔵は私はトップクラスだと思っている。緑のボトルに薄墨の洒落たラベルもその味を十分に連想させる。これは来月のカミさんの誕生日用とでもしておくか。

注文から2日で届いた久々のご対面の3本の酒は、瓶ごと冷蔵庫で静かに眠っている。このレベルの酒は慌てて飲む必要はない。冷蔵保存さえしておけば、月日と共により芳醇な酒へと熟成が進むので、敢えて半年〜1年くらい寝かせてから飲むという人もいるくらいだ。5年も寝かせたら立派な古酒にもなり得るポテンシャルを秘めているのだ。

どんなものでもそうだが、きちんと手間隙をかけて作ったものなら、その分野の「本物」が楽しめる。こんな酒がいつでも適正価格で飲める店さえあれば、私だって「プレミア価格を払ってまで飲みたくないわ」とか「寄る年波のせいか、日本酒だと翌日に残るからねぇ」などと言い訳しながら、いつしか嵌って行った焼酎ボトルの呪縛から解き放たれるだろうに・・・。