海月玲二

観光客が多い感じの町なのであるが,実は市内にはそれほどたくさん観光名所があるわけではない.ただ周囲には,現地の人々の生活を垣間見ることができる村々,モンテアルバンをはじめとした古代遺跡,トレッキングできる山とかそういうのがいろいろあるのだ.市内では,教会とかをひととおり見たら,あとはおみやげ屋めぐりが定番らしい.なんか町としては先住民デザインを元にしたアート雑貨が重点らしく,そういう店はたくさんある.別に興味ないので行ってないけど.

周囲のスポットでは,モンテアルバンのほかにはトラコルーラという村に行ってみた.ここはあたりで最大の聖堂があるので,日曜に人が集まり,大規模な市が開かれるので有名である.まあ別に買うものがあるわけではないけど,裂けるチーズ(オアハカ地方名物)とかよくわからない飲みものとか買って,教会の庭で座って食べたりした.横に座っていたじいさんにスペイン語で話しかけられて大変だった.のどかでいい雰囲気だとは思う.

オアハカで町並み的にまず気になるのは,なんかアレだ,建物が低い.平屋かせいぜい二階建ての建物が多い.これは景観的に意図してやっているのだろうか,それとも単に地方都市で人口が少ないだけなんだろうか.道路も広くて,なんか日射しをさえぎるところが少ないんだよな.公園とか中央広場とかの木陰は大変重要である.なお,中心部だけは少し高くてきれいな建物で揃えられていて,街路も石畳で仕上げてあったりする.このへんはいわゆるコロニアル調というやつだろう.

構造としては,ラテンアメリカに多い街路が格子状になった町だ.地形も単純なので,路地を迷ったりするような楽しみはほぼない.



オアハカはわりとはなれたところにあるので,次の目的地であるグアナフアトまではかなり遠い.バスを途中で乗りついで12時間以上かかる.たいへんめんどくさいので,途中で一泊することにした.なお,プエブラ→グアナフアトというバスは6時と13時に存在する(プチ旅行情報).

さて,恒例の失敗談のコーナーだ.

到着してから,次の日のバスの切符を買ったりホテルを探したりしてるうちに夕方になってしまった.それでも,少しぐらいは観光をと思って中心部に出てみるつもりが,市バスを降りるポイントを間違えて大幅に時間をロスし,結局夕食を食べただけになったという話.

バスターミナルからの市バスは中心部をダイレクトには通らないようで,近いところで降りて2ブロックほど歩かないといけなかったらしい.乗ってるうちに,明らかに「降りるタイミングをのがした」ということはわかったので,じたばたせずに終点まで行って逆向きに乗ろうとしたところ,町外れの終点までは1時間以上かかったのだった.しかしまあ途中のよくわからない地点でうかつに降りても,そのあとどうするか悩むところだ.逆行きが同じところを通るとも限らないし.

終点で,さすがにバスの運転手が不審に思い,どこに行きたかったのか聞いてきた.中央広場に行きたかったと答えると「このバスがそのまま折りかえすから,ちょっと待ってろ.降りるところで教えてやる」とかなんとか言って,なんか缶コーラをくれた.人の情けが身にしみる.



グアナフアト郊外に,銀鉱山のあるエリアがある.というか,鉱山が発見されたから,近くにグアナフアトの町が発展したと言うほうが正しいか.

というわけで,ここでは鉱山の跡なんか見物できる.……のはいいんだが,ガイドブックにもあるとおりガイドの説明は全てスペイン語だ.見物できるところは二箇所あって,最初に行ったほう(San Cayetano)は客がたまたま俺一人だったので,ガイドのおっさんはかなりゆっくり話してくれて,なんとか言ってることが理解できた.でももう片方(San Ramon)では,俺のほかにスペイン語圏の客が四人もいたので,ガイドの兄ちゃんはふつうの速さで話し,ほとんどわからんかった.まあ,別にそんなたいした話でもないだろう.

San Cayetanoにはそれなりに観光客がいたのに,San Ramonのほうはちょっとだけ離れてるせいか客がすごく少ない感じだった.でもSan Ramonのほうが,展示品は充実しているし周囲の建物も整備され,若干テーマパーク感が出ている.もういっそのこと共通チケットにして,バス乗り場のあたりで売ったらいいと思うんだがどうだろうか.

どうでもいいけどSan Cayetanoでは「ここはまだ掘っている」とか言ってたような気がする.ほんまかいな.

某ガイドブックとか,「グアナファト」というカタカナ表記がときどき見られるけど,これはスペイン語の音と似てない気がする.断じて「ファ」ではない.「フ」のとこにも母音が入るのだ.

それはともかく,グアナフアトは町並みマニア大歓喜の町だ.ここに来るのは今回のメインイベントである.コロニアル都市であるにもかかわらず格子状の町ではなく,旧市街は入り組んだ路地で構成されている.アップダウンのはげしい立体的な地形で,さらに,何本も地下道が走っていて,離れたポイントが相互に結ばれていたりする.無意味に散歩するだけでも数日間余裕で過ごせた.

ところでこの地下道,地球の歩き方には「危険なので歩くのはおすすめできない」とか書いてある.だがどう危険なのか書いてないのだ.交通事故的に危険なのか? 強盗が出やすいから危険なのか? 実は昼間にちょっとだけ歩いて通ってみた(もちろん他にも人が歩いているタイミングを狙った)けど,とりあえず何もなかった.移動手段としては便利だし,観光的にもおもしろいので,監視カメラを入れたりガードレールを付けたりして安全面に配慮すればいいのにと思うなあ.

それとグアナフアトは大学も有名なので,大学見物家の俺としてはこっちも見物することにした.斜面に作られた本館の複雑な構造は大変すばらしい.方向によってフロア数が違ってたり,複数の建物が結合されたりしているタイプだ.こういう建築はぜひ日本の大学でもやってほしいけど,やっぱり値段的にアレなんだろうか.思うに,こういう建物を一度に作るとコストがかかるから,無計画に建増ししながらちょっとずつ作ったらいいんじゃないか.

正直,建物や町並みの面白さについては,装飾や彫刻の類いはそれほど重要ではないというか,要するにあれはフレーバーだと思う.構造のほうがずっと重要だ.

メキシコシティ近郊の古代遺跡.ちなみにスペイン語の発音だと「テオティウアカン」みたいな感じだ.「カ」のところが強い.

紀元前からある都市で,7世紀ごろに滅びたいきさつはよくわかっていないらしい.いわゆる謎の古代文明だ.まあ実際のところ,単に戦争に負けたとか疫病が流行ったとか別の町に勢力を持ってかれたとかその程度の話なのだろう.アメリカ大陸の古代文明については,スペイン人に荒らされたのもでかいけど,文書がほぼ存在しないのが痛い.アレだ,文書があれば歴史学で,文書がなければ考古学なのだ.具体的なお話は残らなかったのだ.ロマンがあるという見方もあるかもしれない.

実際に歩いてみると,でかい.とにかくでかい.ピラミッドもでかいがなにしろ敷地がでかい.はじからはじまで2キロ近くある.この距離を,直射日光を受けながら,ピラミッドとか見物して歩くわけだ.飲み水と帽子の用意は必須である.忘れた人向けに,入口に帽子屋が何軒もあるほどだ.

3世紀ぐらいに最盛期を迎えてるこの遺跡と,中世に近いアステカ遺跡とを比べたりしても,建築とかにはそれほど大きな変化がないような気がする.まあ現代みたいな科学技術が使えるわけじゃないからそんなもんか.

どうでもいいがトラロック神像はなんとなくシシマイに似ていると思う.



メキシコの首都だ.中央広場周辺は,さすがにきれいで大きな建物も多い.しかしちょっと離れるとかなりボロい建物が目立つようだ.ボロくても色は派手だったりするのがラテンアメリカっぽい気はした.郊外のほうまで行ってみると,鉄格子でガードされたスタイルの店が増え(客は店内に入らず,外から欲しいものを店員に言う方式),ちょっと夜とかは通らないほうがよさそうな雰囲気のところも見うけられた.

さて,巨大都市なので面積も広く,それなりに交通機関を駆使しないと大変である.でも先進国みたいな信頼性はないので,多少は余裕を見て行動すべし.地下鉄に乗ったら目的方向のホームに行く階段が封鎖されていて,よく見たら「こっちは今使えないから,逆方向に一駅行ってから戻ってね」とか貼り紙がしてあったりとか.バスのドアが壊れて30分ぐらい外に出られなくなったりとか.地下鉄は時々何の説明もなくしばらく止まったりすることもあった.いや,説明されてもたぶんわからないけど.

「メトロバス」という専用軌道を走るバスがあって,路面電車的に使われているのだが,これが夕方ラッシュ時になるとそうとう混雑する.実際ホームの客が乗りこめなくて諦めたりしてるわけだが,当然ながら次に来たやつだってやっぱり満員なのだ.毎回せいぜい1〜2人ぐらいしか乗れない時間帯,ホームにたくさんいる客は結局どうしてるんだろうか.

まー色々と大変そうな町ではある.今はなんとかだましだまし都市機能を動かしてる感じ.もちろん首都なので,お店とかレストランとかはたくさんあるし,市内の見所だって多いのだが.

あと国立宮殿の中庭には猫がいっぱいいる.


この記事は2015年3月現在の話で,俺の個人的な印象である.注意されたし.

要するに,メキシコではマフィアの抗争が激化している地域が危険で,そうでなければ普通の注意でいいようである.俺が今回滞在したオアハカ・グアナフアト・メキシコシティ中心部では,現在はそれほど大変なことにはなっていないようだ.散歩してて気付いた点としては,

  • 一般人もよくスマートフォンを路上で使っている
  • 公衆電話はだいたい壊れていない
  • 夜になっても若い女性が一人で犬の散歩なんかしている
  • でかいカメラを下げた観光客も普通にうろうろしている

というあたりが,町の治安が最悪ではないことを示していると思う.まあスリとかは出るかもしれないが,拳銃強盗とかが日常的に出る雰囲気ではなかった.

あと,なんか警官が多かった.特にメキシコシティはものすごく多くて,いつでもそこらじゅうにいる.深夜早朝でもいる.しかもけっこう重装備だ.まあこれも治安維持のために役立ってるんだろうけど,あんなに多いと別の問題が発生しないか気になってしまう.実際警官が起こした事件とかもあるようだし.

メキシコ全体として旅行に行くべきではない,とまでは言えないと思う.どの地域は避けておくべきか,情報収集は必要だろうけど.

なにしろアメリカ大陸だから,珍しく米系の航空会社を使った.

常々聞いてはいたけど,アメリカ合衆国経由便というのはめんどくさいな.まず事前に例のESTAとかいう謎の認証を受けないといけないし,乗り継ぎだけなのにしっかり入国審査があるし,荷物を預けてたら一旦受けとって預けなおさないといけないし.

ところで,帰りはメキシコシティからサンフランシスコを経由して関空に行く予定で,これが1時間半しか時間の余裕がなく,国境審査や荷物の処理が間に合うのかけっこう心配していた.しかしサンフランシスコで急ぎ国境審査を抜けてみると,関空行きは欠航だという.成田経由に変更になり,1時間ほど余裕ができてしまったので,急いだのは全く無駄であったことである.機体のメンテナンスのためとか言ってたが,なんかやっぱりボーイング787はまだまだ安定性に難がある感じ?

予定より3時間ほどよけいに時間がかかって家にたどりつき,ああやれやれと思っていたら,なんか125USDぶんのクーポンをもらえた.意外な対応でちょっとびっくり.しかしユナイテッドで有効期限一年か…….うーん.

ところで,米系の会社は機内食がマズいと聞いていたけど,これは別に何とも思わなかった.というか,エコノミーの機内食なんてどこも大差なくね? まあ,アルコールが全部追加料金というのはちょっといただけないかも.

2015-03-11(水)

無題

機内映画の感想コーナー.

  • Gone Girl: これはサイコホラーとかサスペンスとかそういうジャンルなんだろうか? なんか登場人物がみんなアホっぽいので,まとめサイトの修羅場ネタみたいな雰囲気なんだけど.まあ,人間のアホさはまあまあよく描けてるかも.
  • Maleficent: 最後のほうがバトルものみたいでちょっとよかった.マレフィセントに飛び道具がないのがポイントだと思う.三妖精がアホすぎるんだけど,これは姫をストーカーする理由をつくるためにわざとこいつらに預けたのか?
  • The Imitation Game: なんかこれちょっと陳腐じゃない? 先がどうなるんだろうとか全然思わなかった.結局,件のマシンは暗号解読にどう役立ったのかさっぱりわからないし.チューリングマシンの話も,言ってみただけだし.

ところで,サンフランシスコ→成田便の飛行機は,いまどき個別モニタがないタイプだった.見るもの選べなくてションボリだ.Whiplashとかいう映画もやってたけど,ついていけなくて10分ぐらいで脱落した.音楽モノは苦手だ.