1995年のヨーロッパ映画。日本公開は1996年10月。
レオナルド・ディカプリオ、デヴィッド・シューリス出演。
この8月シネフィル・イマジカで放映中。
アイドル、レオ様がトップ・クレジットのこの映画、なかなか正当な評価を受けるのは難しいかもしれない。
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」でルーピン先生を好演しているデヴィッド・シューリスが出演しているので、観てみる気になった。
間違っても、「ハリー・ポッター」シリーズのようなファミリー、お子様向け映画ではないので注意。
内容は、19世紀後半のフランスの詩人、ランボーとヴェルレーヌを描いている。
この二人の関係は、ちょっとだが「アマデウス」のモーツァルトとサリエリの関係を思い起こさせる。
この映画においても、「アマデウス」のように史実とは多少異なっても、あるいは想像にたよって、大胆な脚色演出をしても良かったように思うのだが、残念ながらそこまで踏み込んではいない。
実在の人物を扱うのは難しいとは思うが、かといって、詩人としてのランボー、ヴェルレーヌも浮かび上がってこないし、今一つ物足りない仕上がり。
どうせなら、フランス語でやってくれれば良かったのに、とも思う。
意味がわからなくても、フランス語独特の響きで韻を踏んだ詩でも朗読してもらったら、それだけで雰囲気が出るのではなかろうか。
映像は、ヨーロッパ映画らしく綺麗にまとまっていると思う。
細かいことだが、カットのつなげ方がいくつか雑な部分があったのが残念。
それじゃ前後のシーンをいかにも別々に撮りました、みたいな感じ。
若き天才といった役どころはディカプリオにぴったりだと思う。
16歳の天才を、16歳の子役にやらせようと思ってもなかなか難しいだろう。
この映画の時、ディカプリオは20歳くらい。
でも余裕で16歳に見える。
(さすがに「Catch Me If You Can」で13歳を演じたのは無理があったが…)
もともと、リバー・フェニックスとジョン・マルコヴィッチで予定されていたようなのだが、リバー・フェニックスが急逝してしまったらしい。
もし、マルコヴィッチがヴェルレーヌを演じていたらそれこそ「禿げた醜いおっさん」に扮してそれはそれでぴったりだっただろう、と思う。
デヴィッド・シューリスもその「禿げた醜いおっさん」に扮しているのだが、この映画の頃は、痩せて背が高くて、きちんと装えばスラッとしているし、手が手タレかと思うくらい綺麗で(笑)、そこまで言うほど醜いかなぁ?という感じ。
(余談だがこれくらい痩せていたほうが shabby なルーピン先生にぴったりだったように思うのだが…。)
しかし、芸術家というのは人間的にダメなヤツがやっぱり多いのか…。
それとも彼らが飲んでいた禁断の酒「アブサン」という酒のせいか…。
そんな思いっきりへタレなヴェルレーヌを演じ、ディカプリオ演じるランボーをひきたたせていたシューリスに拍手。
(ヘナヘナっとした雰囲気を出すときの独特の物腰は本人の癖か?一瞬だけだがルーピン先生と同じ。)
「仮面の男」とか「タイタニック」を見てもディカプリオをぜんぜん良いと思えなかったのだが、ここではどうして、良いではないか。
ディカプリオの演技が上手いのか、彼の素の魅力をランボーの魅力に重ねた演出力なのかはわからない。
美少年すぎてしまって、ヴェルレーヌの義母と妻が「薄汚い田舎もの」と思う下りも、ぜんぜんそうは見えない(苦笑)。
これは工夫が足りない、というか、カットのつなぎ同様、雑に作ってしまったと言える部分で残念。
そして、美少年だけに、無理して、ランボー後年の姿を回想シーンのように映像化して入れなくても良かったように思う。
さすがに同じディカプリオが演じるには無理があるしね。
原題の TOTAL ECLIPSE とは皆既食のこと。
そのまま訳語をタイトルにしても、カタカナのままでもいただけない。
しかし、この邦題も、二人の背徳的な関係のみを暗示しているようで、雰囲気はあるけれど…。