トリノ冬季オリンピックで日本選手のメダルへの道はいまだ遠い。

ある程度予想はされていたものの、予想を超える事態も起こった。最も驚いたのはジャンプの後検量で失格となった原田雅彦である。最終的には自己管理の世界だろうが、ギリギリの部分で勝機を見出すしかない立場なのに、その顛末はまさにお粗末この上ない。コーチや監督のマネージメント能力も疑ってしまう。戦う以前の問題だ。

出張で行ってた一昨日の大阪のホテルのテレビで、何気に見ていたオリンピック中継。偶然映った女子カーリングに思わず引き込まれてしまった。長野オリンピック競技委員長氏の解説がわかりやすく的確だった事もあり、いっぺんでファンになった。

先の先を読む洞察力、10イニングの攻防を見据えた戦術展開など、実に奥が深い。氷上のチェスと言われる所以である。今の今まで地味でおとなしい種目とばかり思っていた私を刮目させるに十分の迫力で、重さ20kgの石を約40m離れた地点にピンポイントで滑らせるためのライン(コース)とウエート(強さ)が勝敗に直結する。だから早い段階ですべてのラインのクセとその日の氷の状態を読み切る事が必須なのだ。

1イニングに交互に8個ずつの石を投げて、最終的にハウスと呼ばれる円の中心に近い位置に石を置いたチームが得点される。だからと言って単にハウス内に石を置いても相手に簡単に弾き出されるので、しばしばガードストーンという防御のための石をハウスの前方に置きに行く戦術に出る。ガードストーンの後ろに石を置ければ、敵の弾き出し攻撃(テイクアウト)から守られるからだ。そのためにカーブをかけて回り込ませるテクニックも見ものである。

この競技は、最後の一投をできる石(ラストストーン)を持っている後攻が圧倒的に有利で、後攻をキープするためにわざと点を取らなかったり、後攻を得るために相手にわざと点を与えてイニングを終了するという作戦もあるくらいだ。

この日の対戦相手ノルウェーは、名前は忘れたが40歳を過ぎても世界最高のスキップ(主将・作戦を指示)と呼ばれる選手を擁する強豪で、力及ばず敗戦。通算成績1勝2敗となってしまった。たった一度のミスが敗戦につながりかねないスリリングなスポーツであるゆえ、コントロール技術が第一で、それがあってこそ戦術が生きてくる。その意味で日本と世界との差が思ったほど大きくない事が伺えたのも嬉しい。

結局試合終了が午前3時。さすがに翌日は眠かったが、何とか乗り切った。帰京後に行われたデンマーク戦も落とした日本。1勝3敗となっては予選通過が極めて厳しくなったが、せめて最後まで応援してあげたいと思う。

1勝3敗と背水の陣だったカーリング女子の日本チームは、その後カナダを下し、世界ランク1位のスウェーデンと互角の勝負の末惜敗。しかし前回覇者のイギリスに勝ち、イタリアにも勝って星を4勝4敗とし、強豪スイスとの最終戦に勝てばタイブレークに持ち込める可能性を残した。

だが、運命とは皮肉なものである。スイス戦では前半に大量リードを許し、第8エンドでトドメをさされ苦渋のギブアップ。一方のカナダはノルウェーに勝ったため、たとえ日本がスイスを下したとしてもタイブレークの芽はすでに無かったのである。

ここまでの道のりを振り返り、その結果を語れば、さまざまな要因が挙がってくるだろう。中でもスキップ小野寺選手の前半の不調が黒星先行の原因だったという指摘を目にした。だが、彼女は後半戦なるにしたがってミラクルショットを連発し、日本を勝利に導いた立役者でもあるのだ。特にイタリア戦での奇跡の一投がなければ望みはつながらなかったのである。

オリンピックという特別な舞台で、ここまで健闘した日本女子チームにこれ以上何を望むと言うのか。戦前は他の種目に比べてもほとんど注目も期待もされてなかったじゃないか。

取材に答えて彼女は言った。「準決勝に進めずに悔しい思いもありますが、強豪チームとも対等に戦えて、この4年間カーリングをやってきて良かったです」

終始安定したテクニックを披露した林選手も「準決勝には進めませんでしたが、手応えをつかむ試合ができたし、カーリングの魅力を日本全国の皆さんに知ってもらう事ができたのではないかと思います」と話した。

そうだ、それでいい。少なくとも私にカーリングの面白さ、奥深さを教えてくれのは、まぎれもなく彼女たちだ。他でもない彼女たちの奮闘ぶりが私をカーリング・フリークにしたのである。私はそれで十分だ。

幸いな事に日本チームは外国チームに比べて平均年齢も若い。4年後のバンクーバーでさらに大きな華になればよい。

民社党永田寿康議員によるホリエモンメールすっぱ抜き騒動だが、どうやらここへ来て旗色が悪いようだ。2度の質疑に立った後、雲隠れ。真偽の程が明らかにならないうちに引責辞任の意向が漏れ始めているという。

だが私は、当事者の一人である自民党武部幹事長の否定の態度が当初から気になっていた。あれほどエモーショナルな人物が、身に覚えが無い濡れ衣を着せられたのであれば、あんなに淡々としていられるだろうか? 本来なら声を張り上げ、無礼だ名誉毀損だと怒鳴ってもいいはずなのに。やっぱり多少と言わずスネにキズありと睨んでいる。

そんな今朝、例によって「きっこのブログ」を見てまた驚いた。それによれば、ホリエモンメールの送信先は山崎徳之氏だそうだ。

「山崎?」とっさに今朝見たワイドショーが頭をよぎった。彼は、昨日逮捕された新取締役になったばかりの熊谷史人氏の後任として発表されたその人である。これが事実なら、地検特捜部は当然捜査を進めているだろうし、永田議員や民主党が送信先すら言えない理由もそこらへんにあると推察できる。それでも地検特捜部にしたら余計な所から捜査の足を引っ張られた格好だ。

もし、違法献金とか裏金操作からの彼の容疑が固まれば、また逮捕である。恥の上塗りの上塗りである。ライブドア株の上場廃止も秒読み段階に来ている今、ホリエモンにしてもこれ以上否認を続けていれば、取り返しのつかない致命傷に近づいて行くばかりだ。事態はすでにゲームオーバーなのに。

ライブドア幹部諸君。「若者のパワーと発想」で旋風を巻き起こしたのなら、今度は「若者ならではの潔さ」で謝ってしまいなさいな。

件の民主党永田寿康議員、今回のメール騒動の前にも数々の暴言・失言があったようだ。ちょっと調べてみてもこんなに出てきた。

2005年7月8日 倫理選挙特別委員会で「都議選の際、公明党の支持団体の住民票が東京都に移されている疑念がある」等と発言。その根拠は出所不明の風聞。河野衆院議長から注意を受け、与党からは懲罰動議が出された。2000年の初当選以来、彼が受けた懲罰動議は5回。民主党は公明党に謝罪。

2005年8月28日 事務所開きの席で再び7月同様の発言。さらに「創価学会は宗教団体として認められておらず、都の認証をもらうために学会系の都議を増やして圧力をかけなければならない」等と発言。しかし、創価学会は1952年宗教法人の認証を得ており、悪質な虚偽の流布として、創価学会本部は名誉毀損で刑事告訴。

2005年12月18日、国政報告会で耐震強度偽装問題に触れ「住民は火をつけたくてしょうがない。阪神大震災では激甚災害指定欲しさに被災者が火をつけてまわった」等と発言。発言内容の録音を入手した東京スポーツの取材に対し、事実を認め謝罪。

開いた口が塞がらないというのはこういう事だ。

ついでに彼の経歴。

1969年9月2日生まれ
1988年 慶應志木高校 卒業
1993年 東京大学卒業、大蔵省入省
1997年 UCLA MBA修了後運輸省へ出向
1999年 大蔵省を退職、公設秘書となる
2000年 衆議院選挙にて初当選

東大卒のエリート大蔵官僚。でも若手の官僚は超多忙だが、地味な存在。公費でMBAを取らせてもらうが、やはり目立たない毎日。そこで何を思ったか、退職し公設秘書へ。わずか1年後に初当選。念願の国会議員にトントン拍子に上りつめた。さあ、今度は目立ってやる。ここからが本領発揮だ。

根がマジメなだけに「破天荒な人物」への憧れは強かったのだろう。正義感さえあれば、恐れるものなどありはしない。現にオレを頼って情報を流してくれる人がいるじゃないか。オレは東大卒でMBAも持ってるし、なんてたって天下の政治家だ。そんなオレの発言には誰もが一目置くはずだ。

世の中の頂点に近い存在ともなれば、そう思いたい気持ちはよくわかる。だが、彼は試験に受かる知識はあったのだろうが、残念ながら知恵がなかった。大局観より先に直情径行で動いてしまう人間で、だから過激で無責任な言動がこんなに簡単に飛び出すのだろう。そんな自分に酔っていた部分もあったのかもしれない。

逆に全く他意が無かったとすれば、あまりに愚か、大バカのデコスケだろう。

結論。公人でありながら公の場で自分の立場をわきまえず、無責任に振舞うだけの者は黙って去るがよい。君が入院しようが辞任しようが誰も困らない。代わりはいくらでもいる。

【このトピックへのコメント】
  • >住民は火をつけたくてしょうがない。阪神大震災では激甚災害指定欲しさに被災者が火をつけてまわった

    他はともかくホントにこんなこと言ったんですか?
    熱い炎に生きながら包まれ、無念の死をとげた被災者が聞いたら
    なんと言うだろう?
    涙が出てくるよ・・全く・・情けないゎ・・(T-T)
    (2006-03-01 20:23:39)
  • Chaie 彼の言い分が全て正しいとは到底思えません。でも、今回の事を振り返っても「一部は真実だった可能性が高い」という部分に最後の拠り所を求めているように思えます。
    「全部がウソではない。一部は真実なんだ」
    でも、それが本当だとしても、彼の言動がすべてをブチ壊してます。阪神大震災の時も、もしかしたらそう思って行動した人が居たかもしれない。でも、公人の立場の人が、そう言い切ってしまったら、さもほとんどの人がそうしたかのような錯覚を与えますよね。発言力の大きい立場の人の発言はその影響も大きいです。
    だから、普通の人以上に立場をわきまえなければならないはずなのに言い切ってしまう彼の態度に疑問を抱くんです。
    (2006-03-02 00:53:57)