海月玲二
2010-03-04(木)

無題

どうも最近妙に忙しくて困ったものだ.今日は旅行に出発する日のはずなのだが,昼にはまだ仕事をしていたりした.いやまあ普通に勤めている三十代ならそんなもんなのかもしれないが,ニート的精神の人間としては異常事態なのである.

まあ俺に仕事をくれる人というのはほぼ一人だけなので,俺が忙しいということは某Sさんは殺人的に忙しいということなのだが.倒れなきゃいいけどね.

俺は所詮パートに過ぎないしがんばる動機もべつにないので,周囲のひとたちがすごく忙しそうにしてても,気にせず楽しく旅行に行こう.

アフリカ大陸初上陸だぜイエーイ.

モロッコはアフリカの中では比較的旅行しやすい国だが,その中でもここは観光地のわりに楽に歩ける.入門によろしい.物売りもしつこくないし,なにしろ道案内しますよ君が全然出現しないのだ.確かに迷うほど複雑ではないが,それなりに路地はあるので散策する楽しみはちゃんとある.白と青がイメージカラーの街並も,オサレなほうではないだろうか.大西洋とあわせて眺めるとなかなか格好よいし.

まあ難点は,行くのがめんどくさいという点かもしれないね.カサブランカから7〜8時間はかかると思うし,砂漠行きやフェズ〜マラケシュなどの一般的な観光ルートの途中でもない.

あと特筆すべきは,もともとモロッコは猫の多い国だが,その中でも特にうじゃうじゃ猫がいるという点だ.観光客向けの仕込みなんじゃないかというぐらいわんさかいる.あんまり逃げないし,下手すると寄ってくる.猫好きな人にとっては,町ごと猫カフェのつもりで訪れてもいいレベル.

ところで,夕方に変なパレードみたいのをやっていた.それはいいのだが,なんか参加してる人が観光客とか素人みたいな人が多かったのが気になった.あれはどういうイベントだったんだろう.


マラケシュは赤茶色い.建物がなんでも赤茶色いし地面も同じ色.エッサウィラからバスで来ると,あるところから突然景色が赤くなるのである.旧市街とかで建物の雰囲気を統一してるところは多いが,ここは新市街のビルの類まで赤い.徹底しているな.

さて,モロッコ二大迷宮都市の一翼を担う町なわけで,ここの旧市街はけっこう複雑である.ただ,一人で歩けないというわけではなかった.表通りとそれ以外の道は区別が容易なので,慣れないうちは基本的に表通りだけを通るようにすればわりと大丈夫なのだ.一般的な見所や門やホテル街などには,細い路地を通らなくても行くことができる(路地は基本的に,その奥の家のためにあるのだ).路地をぶらぶら散歩したい場合でも,帰るときには表通りを探せばよい.まあ,「一日しか余裕がないけど見所は全部チェックしたい」みたいな人は最初から公認のガイドを雇ったほうがいいかも.

なお,中心部をはずれると「道に迷ったんだろ?広場まで案内するからついてこいよ」という連中(もちろんあとで金を要求する)が増えるので,微妙にウザい.というかいちいち断わるのがめんどくさい.あまりにめんどくさいので,「日本語でしか返事をしないでおき,あきらめるのを待つ」という方針でいってみた.手抜きだ.

ところで,ここの中央広場は「毎日毎日縁日のようなことをやっている」という実に奇妙な設定になっている.正直誇張じゃねえのと思っていたが,確かに滞在した三日間ずっとやっていた.なんでそんなことが成立するのかよくわからない.毎日どっから客が来るんだろう.


2010-03-12(金)

フェズ

というわけで今回のハイライト,旧市街は世界一の複雑さを誇るというフェズまでやってきたのだ.しかしせっかくのハイライトなのに滞在した日は一日中雨でしょんぼりな感じ.旧市街内部にはときどき天井が付いてるんだが,これはあくまで日射しを避けるためのもので,雨には全然役に立たないのだ.むしろ中途半端に水が溜まってうっとおしい始末.

というか全般的に,この国は治水にあまり気を使っていない.ちょっと雨が降るとすぐ道路が寸断されたり線路の調子が悪くなったりするらしく,鉄道が大幅に遅れたりバスが止まったりしていた.やはり乾燥地帯の発想なのだろう.街路の水はけも悪く,町の中にあちこち大きな水たまりができていて大変厄介だった.

まあそれでもフェズ旧市街はおもしろいことは間違いないので,ところどころで雨宿りしながら散歩を満喫した.ちなみに,ここではマラケシュと違って表通りとそれ以外の道の太さがほとんど一緒だったりするが,それでも,通る人や店舗の数で区別は可能だ.だから「慣れないうちは表通りだけ歩く」という基本はやはり有効である.マラケシュよりサイズ自体は小さいので,「ずっと表通りを一方向に進んでいればどこかの門には着く」という手も使いやすい.

そもそも,フェズ旧市街にはなんとけっこう道案内板があるのだ.これには驚いた.だから別に一々道案内君の相手をする必要はない.ガイドしてもらいたいなら最初から公認の人を雇ったほうがいいし.なお,ここはマラケシュなんかよりもはるかに声をかけてくる連中が多い.特に鞣革工業地区.メシガワメシガワ言うから何かと思っていたら,日本語で鞣革と言ってるつもりだったようだ.メシガワ君のなかでも一人,俺がずーっと日本語で返事してるのに長時間しつこく粘る奴がいて,あれはなかなかすごかった.見上げた根性である.別に相手はしないが.あと第一声が「フレンドォ」の奴も多いが,あれはどう考えても逆効果では.

恒例,別に観光地でもない町に一泊してみようのコーナーです.正確に言えばここはフェズやメクネス在住の人が避暑に来たりはするらしいが,今の時期にしかも外人観光客がわざわざ来るようなところではない.

いちおうアラブ式旧市街と市場はあるが,まああっさりしたものである.観光客的にはどっちかと言うと,山の斜面にはりつくようにしてできた住宅街とかのほうが面白いかも.街並も面白いし,上のほうに登ると眺めもよい.

フェズ・メクネス方面からこの町に来るとちょっとした高原を通ることになるのだが,バスの車窓からの景色もけっこう楽しめる.途中にあるイフレンという町は高原リゾートだそうである.別に行ってないけど.というか今の時期高原リゾートとか寒いだけだが.行きは霧で何も見えなかったし.

このへんでは川魚が取れるらしく,タジン(モロッコ風の煮込み料理.具は場所や店によっていろいろ)を頼むとデフォルトが魚のタジンだったりした.あっさりしてて意外とうまい.

モロッコの長距離バスは国営と民営に大きく分けられる.国営は日本人のイメージする長距離バスに近く,出発地から目的地まではノンストップ,定員以上は乗せない,休憩もありという体制で,車体もきれいで快適だ.民営はその逆.しかし国営がフォローしてない路線や時間帯をサポートしてたり,柔軟な対応をしてくれたりする.

で,民営バスは路線の途中でも乗り降りがある都合上,だいたい国営よりも時間がかかる.アズルーからメクネスまでは民営バスで来たのだが,メクネスからカサブランカまではちょっと遠いので,民営ターミナルから鉄道駅か国営バスターミナルかに移動して乗りかえようと思ったわけだ.

ここで問題が発生する.バスターミナルは国営民営一緒になってることも多いのだが,よりによってメクネスでは町の反対側にあるのだ.結局,別に滞在予定のなかったメクネスの町を二時間ほど歩くことになってしまった.本末転倒なような気もするが,ま,旅行なんだしそれはそれで結構なことである.

カサブランカは普通の商業都市である.観光客的には,あまり見どころがないと感じてもしかたがないかもしれん.ハッサン二世モスクの異常な大きさを見て微妙な気分になるぐらいか.新メディナ方面は人々の生活がのぞけてちょっと面白いが,行くのが面倒なのだよな.まあ,インフラは整ってるので滞在するのは楽だ.今回,ホテルの部屋が一番コストパフォーマンスが高かったのもここである.シャワーを使っても洗面所エリアが濡れない構造が大変すばらしい.

それはともかく,帰りに空港行きの電車が遅れたのが大変だった.ろくに説明もないまま(というか説明があっても別に助けにはならないか)1時間半は遅れ,空港についたときは案内板に「チェックインは閉めきりました」とか出てる始末(フランス語だから推測だが).離陸時間まで1時間ぐらいは残ってたのでなんとか乗せてもらえたが,危ないところだった.おみやげコーナーとか全然見る暇もなくて残念である.

しかし機内に入ってみると普通に人は乗ってるし,時間通りに離陸したのであるが,これはやはり1時間半ぐらいの遅れで危なくなる時間に出た俺が悪いんだろうか? 今回,旅行中三回乗って三回とも一〜二時間は遅れた.どこかで「モロッコ国鉄は比較的時間通り運行している」とかいう記述を見たような気がしてたが,気のせいだったかもしれない.あるいは,「時間通り」というのは「一日遅れで来たりするようなことはない」という意味だったのか.