海月玲二
2012-09-02(日)

ベラト

ここはアルバニアにある世界遺産のひとつなのに,某歩き方で取り上げてないのはもったいないのではなかろうか.lonely planetだとアルバニア旅行のハイライトのひとつ,とまで書いてあるのだが.

ウリはトルコ型の旧市街で,ここのは「街道に面してやたらとたくさん窓がある」という大きな特徴がある.なんか圧迫感のある光景だ.民俗学博物館的なところの説明では,窓がたくさんあるほうが空気が通って涼しいとか書いてあったけど,正直,町に来る奴を監視する目的があったんじゃないかと思ってしまう雰囲気だった.実際のところどうなんだろう.

また,旧市街中心部は丘にそって作られているのだが,さらにその丘の上には城跡も残っている.ここの城は,城壁内には(城本体以外に)家も並んでいて町になっているタイプなのだが,なんとこの城壁内の町もまだそのまま使われている(城と城壁自体はさすがにもう跡だけである).実際生活するにはかなり不便だろうと思うのだが,すごいなあ.水道とかどうしてるんだろう.

あとこの町ではけっこう馬を目にした.思うに,あれは普通に実用的なんだろう.旧市街の中心部では道がとても狭くて,坂はきついのに自動車が通れない.階段になっている道も多いし.それでも馬とかロバとかなら,荷物の上げ下ろしに働いてもらえるというわけだ.

ちなみに,旅行者として行く場合,食事をするところの選択肢はそんなにない.素直に観光客相手のレストランも行ってみることをオススメする.というか,「観光客相手の店は高くてマズい」というのは,外食文化が発達している地域の常識なんじゃないかと思った.世の中,そうでもないところもたくさんあるわけだ.

なお,カフェやバーはかなりあるので,それは心配無用である.


2012-09-02(日)

無題

ベラトからティラナに行くバスの中で:

アルバニア人「ところで,日本だとアルバニアってどういう風に思われてるの?」
俺「……いやー,そもそも日本ではアルバニアに関する情報自体あまり無くってさ」
ドイツ人「ていうか,どういう所かわかんないから来たんだろ?」

そうそう,そういうことだよ君.旅行好きはこんな理由で行くこともあるのだ.

アルバニアの首都だが,まあ,観光客的には見所の少ない町である.でかいわりにインフラも(先進国の基準からすると)整っていないので,滞在もそんなに楽ではない.

特に,長距離バスの乗りかたがとてもわかりにくいのは,ちょっとなんとかしてほしいと思う.一番大きなバス乗り場は市内のだいぶ西のほうにあるのだが,違う場所から出るバスもけっこうある.ミニバスで行ったほうがいい場合もあるし,私営のバス会社の場合そのオフィス前から出たりする.よくわからない場合,ホテル(ある程度以上のランクなら)やツーリストインフォメーションで聞かないとどうしようもない.インフォメーションは親切でいいのだが,土日は休みなのでそれだけ注意.

というか,ヨーロッパを旅行するときは日曜をどこに当てるか悩むよね…….首都だからまあ大丈夫じゃないかと思ってここにしたのだが,見事に店もインフォメーションも閉めてるところばかりだった.俺は「旅行中にそこの本屋で数学の参考書を買ってみる」という趣味があるのだが,結局ティラナでは開いてる本屋をほとんど見つけられなかった.残念.

ただ,飲食店はさすがにけっこうやっていた.ティラナには,首都らしくオサレ買い物エリアが存在し,レストランとかカフェとか行くとそれなりにいい感じである.lonely planetでおすすめのレストランで晩飯を食べていたら,外人観光客とちょっとおしゃれした地元の客が半々ぐらいで来ていて,ちょっと面白かった.


アルバニアとマケドニアの国境越えはそれほど便利にはなっていない.特に,旅行者の多くが行くであろうオフリド(マケドニア)とティラナ(アルバニア)の間には直行の交通手段は存在しないらしい.

国境近辺はオフリド湖があるので,図のように北を回るルートと南を回るルートとが考えられる.北回りだと,ティラナからスコピエ行きのバスに乗ってストルーガで降り,そこからミニバスでオフリドに行く.わりと楽だと思われるが,実はティラナ発スコピエ行きは9時か16時の二本しかないようだ.間抜けな話だが俺はバス会社がどこにあるか見つけられず,9時のに乗ることができなかった.

16時までぼーっと待つのもなんなので,南回りルートを試してみることにした.まずティラナからポグラデツまではミニバスで行ける.しかしまたここで軽く失敗である.ミニバス乗り場とおぼしきあたりに,確かにバス停はあるのだが,中心街に向かうバスしか来ずどうも様子がおかしい.一時間ほど待ってみたがどうも何もないので,あたりの人に聞いてみたところ場所を間違えていたことが判明.ほんの少し違っただけなのだが,絶妙に最初の位置からは見えないあたりにミニバス乗り場があった.

気をとりなおしてポグラデツ行きのミニバスに乗る.ポグラデツに着いたらタクシーでスヴェティ・ナウムまで移動し,そこからバスに乗ろうと思っていた.ミニバスの運転手にもそのように言ったつもりだったのだが,どうも英語での意思疎通にやや失敗していたようだ.ミニバスはポグラデツに着く前に国境に寄り,俺を下ろしてポグラデツに行ってしまった.しばらくして理解できたことだが,これは実は北の国境に下ろしてくれていた.つまりそのほうが近いからのようである.

それはいいのだが,この状態で国境から先に行くにはそこにいたタクシーしか方法がない.なんとオフリドまで30ユーロと言うので大変困った次第である.一時間もかからないのにずいぶん高いような気がするが,さりとて他にどうしようもない.やむなくタクシーに乗りこみ,拝み倒して24ユーロちょいで勘弁してもらった.うーん.選択権がないと交渉しようがない.ていうか,後で気付いたのだが,ストルーガでタクシーを降りたほうがマシだったのかもしれん.

オフリドはマケドニアの数少ない観光名所である.きれいな湖のそばに旧市街や古い教会,城塞跡などが残っており,風光明媚なよい所だ.観光客がわりと来るので,安宿やプライベートルームの類も充実している.今回は,コストの都合で新市街のプライベートルームに泊まることにした.家主の老夫婦は二人とも英語がほとんどわからないのだがわりと親切で,コーヒーいれてくれたり,洗濯機を使ったら干しておいてくれたり,何か色々と町の説明なんかもしてくれていた(ような感じだ).ときどきロシア語からの類推で意味がわかることがある,という程度だったけど.

ここの旧市街はそれほどビシッとスタイルが定まっているタイプではない.下のほうはトルコ風のお屋敷みたいのが何軒もあるが,上のほうはけっこう普通の家もあったりする.でも,狭い路地を歩いたりするのはやはり楽しいものである.また旧市街の一番下はそのまま繁華街とつながっており,オサレカフェとかレストランとかもいろいろある.このへんでビールだのコーヒーだの飲みながらぐだぐだ過ごす,というのも定番であり俺もそうしてみた.レストランの飯もわりとうまい.

中心部から湖岸にそって東側は,そのまま遊歩道になっていてホテルやレストランなんかもあり,湖で遊んでる人もいたりしてけっこう賑やかである.一方旧市街のある丘をまわりこんで西側に行ってみると,一気に人が減って静かになった.こっちにもビーチやコテージっぽい設備があるのだが,もう夏も終わりのせいかほとんど誰もいない.こっちは国内の客が主に来るのかな.

ところで,アルバニアは地中海文化圏に属しているので,夏の昼間は町の活動がだいぶ停止する.そして夕方になるとまた急に人が増えるのだ.しかしマケドニアまで来るともはやその文化圏ではないのかもしれない,と思った.昼でも夜でも人の量がそんなに違わないようである.あと,アルバニアではカフェや道端でのんびり話をしている連中はほとんど全員が男だったのだが,マケドニアでは別にそういうことはないようだ.アルバニアはイスラム教徒が多いからだろうか.


たまたまだったのかもしれないが,どうもスコピエではあっちこっちでやたらに工事をやっていた.特に,市街が一望できるという城塞跡が入場不可だったのが大変残念である.

スコピエはだいたいの地域が高層ビルや高層マンションの並ぶふつうの大都市なのだが,旧市街の一角だけが突然トルコ式全開であからさまに雰囲気が違う.市場とかもあって人がたくさん来ていた.また,旧市街近辺にはいわゆるキャラバンサライ(隊商宿.四角くて中庭があって二階建てのアレ)の跡なんかもあったりするのだが,たまたまちょうどイベントなどやってるところに遭遇した.何かデザイナー関係のイベントらしく,それぞれの小部屋にデザイン作品を展示したり,中庭ではプレゼンテーションやパネルディスカッションなんかの出し物もあったようだ.まあ内容はともかく,こういう遺跡をイベントで活用するというのは面白いなと思う.

この町は中心部に三つも四つもショッピングセンターがあってちょっと不思議だ.たいてい,そういうのはけっこう郊外にあるもんなのだが.だいたいは先進国型のきれいなショッピングセンターなのだが,中央のやつだけはなんだか旧共産圏の雰囲気をひきずったダサさがある.旅行者として見ると,こっちのほうがむしろ味があると言えるかもしれん.

どうでもいいが中央広場にある超巨大な像は,マケドニアの首都ということでやはりアレキサンダー大王なんだろうが,彼の生まれたころのマケドニアってテサロニキ近辺だよな.

あと,泊まった宿に宿泊者用のPCが置いてあって,それはたまにあることなのだが,OSがubuntu linuxなのでびっくりした.


スコピエからソフィアに行くのは,直通バスがあるのでそれに乗るだけである.おわり.

いや,本当に単純だ.国境でバスに係官が入ってきて一旦全員のパスポートを預かる,よくあるパターン.だいたい5時間弱ぐらいでソフィアに着く.しいて言えば8時半発の次が15時発なので気をつけるぐらいだが,スコピエのバスターミナルはわかりやすいので,寝坊さえしなければ問題はないと思う.

むしろ今回はソフィアに到着してからが問題だった.9月6日はブルガリアの休日なので,ツーリストインフォメーションが休みなのである.前もプロヴディフで同じ目に合ったのをすっかり忘れていた.あれはプロヴディフだけの休日かと思ってたらそうでもなかったようだ.というか某歩き方には,ソフィアのインフォメーションは無休とか書いてあるのだが…….

悪いことに今回はソフィアの宿に関する情報を何も調べてきておらず,ガイドブックすら持っていなかった(次の日にYと合流するので,持ってきてもらうことにしていた).完全にインフォメーションを当てにしていたのである.しかたがないので,空港バス停留所の近くをしばらくうろうろ歩き回ってみたところ,一軒ホテルを見つける.しかし,これが普段なら絶対泊まらないような高級ホテルなのだ.かなり悩んだが,(1)Yを空港に迎えに行くのが朝であることから,バス停から遠いホテルは避けたい (2)荷物を持ったまま暑いなか歩きまわってもう疲れた,という理由でここに泊まってしまった(もちろんカード払い).すげえ敗北感.

高いだけあって部屋はすっごく快適だったけどね! ていうか,高級ホテルなのに予約なしで泊まれちゃったのも変な感じだ.

ブルガリアに入ってからどうするかは,実は全くノープランだったのだが,Yといいかげんな協議の結果黒海方面に向かうことになった.一気にバスで移動してしまうと六時間以上かかってちょっとしんどい(し,この案に決まった時点でもう昼も近かった)ので,途中プロヴディフで一泊することにした.

せっかくなので,プロヴディフも半日ほど観光をする.中央通りも旧市街も二年前来たときと変わらぬ雰囲気で,前回を思い出しながら散歩した.けっこう覚えているものである.中央通りの広場にあった整備中の遺跡が,整備が終わって入れるようになっていた.あと中央通りのマクドナルドの看板はキリル文字で書いてあったはずだが,ラテン文字に変わってたのはちょっとショックである.

ショックと言えば,中央通りの両替屋で両替したらレートをごまかされていたのもけっこうショックだ.10ユーロかそこらの損害ではあるのだが.こういうのに当たったのは初めてだと思う.しょぼーん.あとから気づいたのだが,レートの表示に「買い」と「売り」の両方の表示がしてある店と,「売り」のほうだけしか表示してない店があるのな(つまり外貨を現地通貨に換えるといくらになるか,頼んでみるまでわからない).あれって関係あるだろうか.

ネセバルとソゾポルはわりとキャラがかぶっている.

  • 地域の中心都市ブルガスからバスで3〜40分.日帰りも簡単
  • かなり古い歴史を持つ港町である
  • 小さな半島に旧市街がある
  • ビーチが近くにあり,海水浴客も多い

などなど.ただし大きな違いが一点あって,ネセバルは世界遺産だがソゾポルは別にそうじゃないのである.おそらく,ネセバルにはかなり古い時代の建物や城壁などが残っているからだと思う.ソゾポルの旧市街もそれなりに観光名所なのだが,まあ実際のところ,トルコ時代以前のものはそんなに残ってなさそうな感じだし.

結果として,ネセバルのほうがだいぶ観光客が多く,観光地化もかなり進んでいるようだ.物価も高く,物売りやレストランの営業もがんばっている.一方,ソゾポルはもっと素朴な感じで,なんか地元の人が来る海水浴場のような雰囲気も少しする.観光地化してない,とまでは言わないが.外人の観光客ももちろん来てはいるけど,ネセバルのように団体で来てたりとかそこら中記念写真を撮る人だらけ,とかいうほどのことはないのだ.というわけで,旅行者的には両方行って比べてみると面白いと思う.個人的にはソゾポルのほうがのどかで好きだ.猫もいるし.




いちおうブルガリア黒海沿岸地方の中心都市の一つである.歴史が古いということもないし,別にこの町自体に観光名所がたくさんあるわけではなく,あたりに観光に行く拠点としては多少人が来る感じ.まあ,港湾都市としての意義のほうが大きいのかもしれない.

それなりにホテルやレストランなんかもあるのだが,スーパーが中心部に無いのはちょっと残念なところである.一番近いところでもけっこうはずれのほうまで行かないといけなかった.あと,プロヴディフから到着した西バスターミナルもかなりはずれのほうにあり,中心に出るのにちょっと苦労した.あとから考えると,むしろ市バスを活用すべきだったのかもしれないな.そう複雑な路線でもないし.

中心都市とは言ってもあくまで地方都市であり,日本の基準からすればずいぶんのんびりした町である.夜に涼しくなると,大通りを海辺の公園まで散歩してる人達がたくさんいたので,まねしてアイスを食べながら散歩してみたりした.どうでもいいが,ここに限らず夏のヨーロッパには夕方〜夜にかけて散歩してる人が多数いるのだけど,本当に大通りを散歩するだけであってどこか目的地があるわけではないのな.よく見てると同じ人が何回か行ったり来たりしてることもある.

特記事項.この町は猫が多い.もともとブルガリアは動物がわりと自由にしている国ではあるが,それにしても特に猫の多い町だった.大通りにも平気で座ってたりするし,レストランで飯を食っていると猫が寄ってきたりする.


前回来たときは「うへえ何この荒れた町」とか思って,さっさと通りすぎてしまったところである.今回二日ほど滞在してみて思ったのだが,ブルガリアの都市部でなんだか荒れた印象を受けがちなのは,廃ビルが妙にたくさんあるからではなかろうか.店舗が入ってたらしき場所が空のままになってる建物もけっこう見るし,つまり,単にブルガリア経済がわりとしんどくて,きれいな大都市を維持する余裕がないだけのような気がする.ただ,そうだからと言って,他の国に比べてことさら不審な連中が多い,というわけでもないようだ.まあいなくはないのだろうが,少なくとも明るい間に歩くかぎりは普通の注意で大丈夫な町ではないかと思った.というか結局バルカン半島は全体的に田舎なんかな…….

まあ今回は,市中心部を散歩した時間より,郊外や南の山(ソフィアの町のすぐ後にけっこう高い山がある)の麓をうろうろしてた時間のほうが長かった.そのあげく,古い教会とか歴史博物館とかの観光スポットには到達できたのだが,一番興味があった「山の上のほうから町を眺めてみる」計画はわりと失敗する始末だ.某歩き方には山頂近くの村までバスで行けるとか書いてあるのに,そんなバスはそもそも存在してなくてがっかりである.何かリフトみたいなものが遠くから見えたので,がんばって行ってみたら「土日祝日以外はやってないよ」みたいなことが書いてあって,またがっかりだ.しょうがないのですこしだけ道にそって上ってみて,そこからの眺めを楽しんだりレストランで飯を食ったりして帰った.

ところで,ここは首都なので,オサレショップの類も探せば見つかる.最終日は調整をまちがえてけっこうお金が余ったので,官庁街の高級っぽいレストランでディナーを楽しんだりしてみた.大変洗練されたお味を堪能できて満足である.今回ぶっちぎりの高額ディナーだ.それでも二人で60レフちょっとだったけどね(1レフ=52円ぐらい).


2012-09-12(水)

無題

飲み食いの話.

前回ブルガリアに行ったときは,ブルガリア名物の冷製スープのタラトルというのについて「これは単なる薄めたヨーグルトではないか」という感想を抱いたものである.しかし今回,慣れてきたせいかおいしいような気がしてきた.いろんな店で頼んでみると,味付けがそれぞれ微妙に違ってるのも面白い.また,自分でオリーブオイルや塩を使って味を調整しつつ食べるのも良いらしい.教えてくれたブルガスのレストランのおっちゃんに感謝.

あと,今回行った地域はワインもけっこう作ってるらしいので(あちこちでブドウを栽培してるのも見かけた),積極的に頼んでみたところ,日本で飲む安ワインとは全然違ってて驚いた.美食とは縁遠い俺でもはっきりとわかるぐらいに違う.てきとうに安いやつを頼んでも,ものすごくブドウの香りがするし,イヤな味はあまりしないし.まあ,そもそもヨーロッパではある程度ワインのレベルが高いのは当然なのかもしれん.パンやビールのレベルが平均的に高いのと同じように.

Yがビール派なのでいつもついビールが多くなっていたのだが,今度からはヨーロッパに行くときはワインも試してみようと思った次第.